[2021_03_30_02]放射性廃棄物の地層処分について(その7)(16回の連載) 放射性廃棄物を地層処分する地域数問題 平宮康広(信州大学工学部元講師)(たんぽぽ舎2021年3月30日)
 
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放射性廃棄物の地層処分について(その7)(16回の連載) 放射性廃棄物を地層処分する地域数問題 平宮康広(信州大学工学部元講師)

◎ 経産省とNUMOが想定するガラス固化体の初期熱と30〜50年後の熱が小さすぎる。経産省とNUMOは、ガラス固化体の発熱について現実離れした説明をしている、と思った。
 そこで友人の物理学者に尋ねたところ、ガラス固化体の重量100kg前後のうち約3分の2が廃液で、残り約3分の1が放射性核種である、しかも大部分が放射能半減期の短いもので、実際に問題となる放射性核種の量は10kg程度と考えてよい、との返答を得た。
 ガラス固化体1体あたりのストロンチウム90含有量が1kgだとすれば、経産省とNUMOの説明は妥当であるといえる。だがその場合、彼らは別の説明で別の現実離れした説明をしていることになる。

◎ 経産省とNUMOは、多くの説明会で、ガラス固化体2万7400体相当の使用済み核燃料がすでに存在する、と述べている。
 他方、ガラス固化体1体あたりの放射性核種の量は広島型原爆30発分である、と述べてもいる。
 だが、広島型原爆30発分のストロンチウム90の量が1kgであるとは考えにくい。
 私見であるが、ガラス固化体の製造技術はまったく不完全で、ガラス固化体1体あたりの放射性核種の量はおそらく広島型原爆3〜4発分である。
 経産省とNUMOは、全国1カ所の地域でガラス固化体4万体を地層処分=埋設する、と述べている。
 だが、全国複数カ所でガラス固化体を埋設することになるかもしれない。
 なぜなら、使用済み核燃料全体の放射性核種の総量は正しく推定できると考えられるので、ガラス固化体1体あたりの放射性核種の量が広島型原爆3〜4発分であるとすれば、ガラス固化体20万〜30万体相当の使用済み核燃料がすでに存在することになるからである(ちなみに、最終処分法はガラス固化体を埋設する地域を全国1カ所と定めていない)。

◎ 現実に、経産省とNUMOは、北海道の寿都町と神恵内村で地層処分のための文献調査を開始した。
 経産省とNUMOは、両町村でガラス固化体を埋設するかもしれない。
 全国複数カ所でガラス固化体を埋設することになれば、全国複数カ所の地域に使用済み核燃料再処理工場を建設することにもなるかもしれない。
 たとえば、小笠原諸島父島列島の婿島で使用済み核燃料再処理工場を建設し、弟島でガラス固化体を埋設する場面があるかもしれない。
 小笠原諸島は東京都である。東京都だけでなく、他府県にとっても、北海道や青森県の「苦痛」は他人事ではない。
 運動等の場で、全国複数カ所(おそらく10カ所前後)で地層処分を実施しなければならなくなると発言するには、ガラス固化体の放射性核種の種類と量を詳しく知る必要がある。
 そこで、説明会に何度も出席し、ガラス固化体の中身の開示を何度も要求した。だが、経産省とNUMOは開示しない。(その8)につづく
KEY_WORD:寿都町_調査応募検討_:神恵内村_文献調査_: