[2021_04_09_05]放射性廃棄物の地層処分について(その10) 北海道寿都町での地層処分に反対する理由 (寿都町「ゆべつのゆ」の硫酸カルシウム量は1リットル=1kgあたり1g) 平宮康広(信州大学工学部元講師)(たんぽぽ舎2021年4月9日)
 
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放射性廃棄物の地層処分について(その10) 北海道寿都町での地層処分に反対する理由 (寿都町「ゆべつのゆ」の硫酸カルシウム量は1リットル=1kgあたり1g) 平宮康広(信州大学工学部元講師)

◎ 温泉水は化石水の一種で、含有成分の大部分が塩化ナトリウムと硫化カルシウムである。塩化ナトリウムと硫化カルシウムの成分割合が、温泉水が弱アルカリ性であるか中性であるか、弱酸性であるかを決めている。
 経産省もNUMOも、さすがに弱酸性の温泉水が噴出する地域での放射性廃棄物の地層処分は考えないと思うが、弱アルカリ性の温泉水が噴出する地域であれば、ためらうことなく放射性廃棄物を地層処分するかもしれない。

 だが、弱アルカリ性の温泉水は、弱酸性の温泉水以上に硫化カルシウムを多く含んでいる場合がある。NUMOが文献調査を開始した北海道寿都町の温泉施設「ゆべつのゆ」の温泉水はその典型である。「ゆべつのゆ」温泉水の水質は弱アルカリ性であるが、多量の硫化カルシウムを含んでいる。

◎ 水温が66度C以下の場合、硫化カルシウムは水和物になる。すなわち、水中でカルシウムイオンと硫酸イオンに分離する。入浴時の「ゆべつのゆ」温泉水の硫酸イオン量は、1kgあたり1195mgである。硫酸イオン量が1kgあたり1000mg=1g以上の温泉水は稀で、アルカリ性水の効用と酸性水の効用を併せ持つ上質な温泉水であるといえるが、他方、ガラス固化体を実装したステンレス製キャニスタを侵食する上で十分な硫酸イオンを含んでいる温泉水=化石水である、ともいえる。
 すでに述べたが、経産省とNUMOは、地熱の上限を60度C前後に想定している。仮に寿都町の地下300m以深の地温が60度C以下の場合、経産省とNUMOは地層処分をおそらく強行する。
 だが、運よく地下施設にガラス固化体と「ドラム缶」を埋設できたとしても、数年〜十数年後にステンレス製キャニスタが腐食して放射性核種が外部に漏れる。

◎ 温泉水の源泉水温と温泉井戸の深さも、放射性廃棄物の地層処分を考察する上で重要な指標になる。だが、「ゆべつのゆ」温泉水の源泉水温と温泉井戸の深さは今のところわからない。
 経産省とNUMOが、寿都町とほぼ同時に文献調査を開始する北海道神恵内村にも温泉施設がひとつあるが、源泉水温と温泉井戸の深さだけでなく、温泉水の水質も含有成分も今のところわからない。

◎ ちなみに、温泉水=化石水は礫層の中を流れる地下水の一部が長い年月をかけて礫層下位層に浸透し、岩盤上層に溜まった「水」である。
 化石水が含む多量の塩化ナトリウムは、その地域の過去が海であったことを意味し、多量の硫化カルシウムは礫層下位層に多量の火山灰が存在することを意味する。
 日本の平野部の大部分がそのような「地層」である。
                    (その11)につづく
KEY_WORD:寿都町_調査応募検討_:神恵内村_文献調査_: