[2021_04_21_06]放射性廃棄物の地層処分について (その14) 海洋プラスチック汚染と地球温暖化の関係性(海水の水温上昇が地球温暖化の原因である) 平宮康広(信州大学工学部元講師)(たんぽぽ舎2021年4月21日)
 
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放射性廃棄物の地層処分について (その14) 海洋プラスチック汚染と地球温暖化の関係性(海水の水温上昇が地球温暖化の原因である) 平宮康広(信州大学工学部元講師)

◎ 太陽光の熱量は地熱の約2500倍であるが、太陽光の大部分が反射するため、地表に届く太陽光熱はわずかである。他方、地熱はすべて地表に届く。
 とはいえ、太陽光熱は無視できない。
 地球は球体なので、対流によるバラつき等を無視すれば、地熱は地球の中心から均等に地表に届くと考えることができるが、地表には陸地と海洋がある。
 水の熱伝導率は空気の約25倍である。そのため、海底に届いた地熱は急速に抜ける。そして海洋の表面が凍るが、わずかな太陽光熱が凍結を防いでいる。
 太陽光熱の下で、海洋表面の海水が蒸発し、上空で雲になり、熱を宇宙空間に放出した後、雨や雪になって地表に降り注ぐ。他方、海洋の表面に温暖な海水=表層水の薄い膜ができる。

◎ 海水の約95%が深層水で、残り約5%が表層水である。暖流が流れる海域で取水する深層水の水温は7〜8度C前後、寒流が流れる海域で取水する深層水の水温は1〜2度C前後で、時刻変動や季節変動は生じない。
 しかし表層水の水温は概ね15〜30度C前後で、時刻変動や季節変動が生じる。 だが、多量のプラスチックが海洋の表面に浮遊すると、海水の蒸発が低下して表層水の膜に熱がこもり、表層水の平均水温が上昇する。
 一流の料理人は、鍋の水に油を少し注ぎ、水の沸点を高める場合があるそうだが、それと似ている。
 すでに述べたが、水の比熱は空気の約4倍である。表層水の平均水温の上昇は、大気中の空気を温め、気温を上昇させる。
 原発に反対することなく、二酸化炭素の排出量を制限して地球の温暖化を阻止せよと主張する人々は、大気中の二酸化炭素が増えて気温が上昇したのではなく、気温が上昇して大気中の二酸化炭素が増えたと考えたことがおそらくない。
 そのくせ彼らは、北極の氷が溶けるのも、二酸化炭素のせいだと言う。

◎ 表層水の水温上昇は海の生態系に大きな影響を与えるが、我々が食する魚介類のほとんどが海の表層に生息している。
 現在、多くの漁民が、漁場の移動や収穫する魚介類の種類の変化に困惑している。
 また、魚介類が体内にプラスチックを取り込む場合があり、海洋プラスチック汚染は魚介類を食する我々にとって憂慮すべき事態である。
 地球の温暖化を阻止せよと主張する人々は、自然エネルギー発電を提案する前に海の「掃除」を提案すべきだ。
 しかし彼らは、真っ先に自然エネルギー発電を提案する。しかも困ったことに、原子力発電や石炭火力発電と同様な大規模発電を想定して自然エネルギー発電を提案する場合がある。

◎ だが、自然エネルギー発電の本来の姿は、地産地消型発電である。上で述べた海洋深層水の低温性と安定性が、地産地消型発電を可能にする。 (その15)につづく
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