[2021_04_23_12]関電前会長ら立件見送り 大阪地検が最終協議 報酬補てん・金品受領問題(毎日新聞2021年4月23日)
 
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関電前会長ら立件見送り 大阪地検が最終協議 報酬補てん・金品受領問題

 関西電力の歴代幹部による役員報酬の補てん(ほてん)や金品受領問題で、大阪地検特捜部は、会社法の特別背任などの疑いで告発された八木誠前会長(71)らの立件を見送る方向で調整に入った模様だ。関係者が明らかにした。いずれも関電に損害を与える不正の認識はなかったとされ、刑事責任を問うことは困難との見方を強めている。地検は今後、上級庁と最終協議して慎重に判断する。
 報酬補てん問題は2020年3月、関電の第三者委員会の調査で発覚。東日本大震災後の経営不振で電気料金値上げと役員報酬の減額を進める中、当時会長だった森詳介氏(80)は15〜16年、退任役員を嘱託として任用し、この報酬名目で過去のカット分を補う仕組みを主導して発案。社長だった八木氏らとの協議を経て取締役会に諮らず決定し、森氏を含む元役員計18人に16年7月以降、計約2億6000万円が支払われた。
 関電を巡る一連の不祥事の中で悪質性が高い問題として、八木、森両氏らは会社法の特別背任容疑で告発された。同容疑は、取締役らが自己や第三者の利益を図る目的で、職務に背いて会社に損害を与えることが成立要件になる。
 森氏らは地検の聴取に、嘱託報酬は元役員の経験や人脈を生かした業務に対する正当な対価だと主張しているとされる。業務は実態を伴っており、特捜部は役員報酬の補てんのみを目的とした仕組みとは言い切れず、関電への損害の立証も困難と判断している模様だ。
 また、八木氏ら83人が絡む金品受領問題の経緯も問われている。第三者委の報告書などによると、歴代幹部は30年以上にわたり、高浜原発のある福井県高浜町の元助役、森山栄治氏(19年死去)から現金やスーツの仕立券など総額約3億7000万円相当の金品を受領した。
 八木氏は岩根茂樹前社長(67)らとともに、森山氏の関連企業に不当な高値で原発関連工事を発注し、関電に損害を与えたとする特別背任容疑でも告発された。ただ、工事価格の設定に不適正な要素は見当たらず、八木氏らが発注に直接関わった証拠もないとされる。特捜部は森山氏の死去で金品提供の趣旨に関する供述を得られておらず、立件は難しい状況だという。
 一連の問題を受け、市民団体が公訴時効や関与の度合いを踏まえて八木、森両氏ら元役員9人に絞って告発。特捜部は20年10月に受理し、捜査を続けている。
 八木氏は10年、社長に就任。16年に森氏の後任として会長に就いたが、金品受領問題を受け、19年10月に辞任した。【山本康介、松本紫帆、榊原愛実】
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