[2021_04_24_04]放射性廃棄物の地層処分について(その15) 「水冷コンビナートと六次産業」 六次産業による地域経済の構築 平宮康広(信州大学工学部元講師)(たんぽぽ舎2021年4月24日)
 
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放射性廃棄物の地層処分について(その15) 「水冷コンビナートと六次産業」 六次産業による地域経済の構築 平宮康広(信州大学工学部元講師)

◎ 深層水には、低温性と安定性の他に、清浄性という特徴がある。深層水は事実上の無菌水である。日本国内には、毎時100キロリットルの深層水を取水する施設が約10施設ある。各施設は、深層水の清浄性を活用して養殖や養魚を営んでいる。
 だが、我々が食する魚介類は海の表層に生息している。深層水を養殖や養魚で活用するには、水温を20度C前後にする必要がある。
 そこで、各施設は電気ボイラー等で深層水を加温しているが、1リットルの水の水温が1度C上昇する場面で要する熱量は毎時1キロカロリーで、約1ワット(1.163ワット)である。
 すなわち、毎時100キロリットルの深層水を電気ボイラーで20度C前後にするには、暖流が流れる海域で取水する深層水の場合1000キロワット強、寒流が流れる海域で取水する深層水の場合2000キロワット弱の電力が必要になる。深層水を加温する場面で要する多大な電力が、深層水の清浄性を活用する養殖や養魚の営みの負担になっている。

◎ だが、低温性を一次活用し、その後清浄性を活用すれば、深層水を加温する必要がなくなる。深層水の低温性をデーターセンター等の冷却で活用し、その後米や麦の貯蔵で二次活用し、その後養殖や養魚で清浄性を三次次活用すればよい。
 米や麦を貯蔵する穀物倉庫の適温は13度C前後なので、深層水を総消費電力500キロ〜1000キロワットのデーターセンターに送水し、その後穀物倉庫に送水し、さらに別の総消費電力500キロ〜1000キロワットのデーターセンターに送水した後、養殖・養魚施設に送水すればよい。

◎ ちなみに、深層水を取水する施設は、たいがい、脱塩設備を保有している。脱塩した深層水は、ペットボトルに詰めて飲料水として使えるが、野菜や果実を栽培する「工場」の農業用水としても使える。
 寒流が流れる海域で取水する深層水の場合、「工場」で栽培した野菜や果実を貯蔵する冷蔵庫に送水した後、データーセンターに送水すればよい(野菜や果実を貯蔵する冷蔵庫の温度は5度C以下にしなければならないので、暖流が流れる海域で取水する深層水を野菜や果実の貯蔵で活用するのはむずかしい)。

◎ データーセンターの冷却や穀物(および野菜や果実)の貯蔵で深層水の低温性を活用し、その後養殖や養魚で清浄性を活用するアイディアは、一次産業と三次産業を組み合わせたコンビナート=水冷コンビナートのアイディアである。
 さらに二次産業を組み合わせれば、水冷コンビナートによる六次産業の創業が可能になる。バイオマス発電と温泉水等と活用する温度差発電=バイナリー発電の組み合わせが、六次産業の創業を可能にする。
                     (その16)に続く
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