[2021_05_31_01]処理水放出 関係省庁が初会合 県などから批判や対策求める声(NHK2021年5月31日)
 
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処理水放出 関係省庁が初会合 県などから批判や対策求める声

 政府が東京電力福島第一原子力発電所の処理水を海に放出する方針を決めたことを受けて、関係省庁でつくる「ワーキンググループ」の初会合が福島市で開かれ、出席した県や農業関係者などから一方的な方針決定への批判や風評対策の徹底を求める意見が相次ぎました。
 福島第一原発で増え続けるトリチウムなどの放射性物質を含む処理水について、政府は、先月、2年後をめどに、国の基準を下回る濃度に薄め、海に放出する方針を決めました。
 これを受けて、関係閣僚会議のもとに設けられた各省庁の副大臣などでつくる「ワーキンググループ」の初会合が福島市で開かれ、県や農協、それに商工会議所なども出席して意見交換しました。
 この中で、福島県の鈴木副知事は、「漁業者をはじめ関係者に丁寧な説明行って風評対策を徹底するとともに、水揚げされた水産物の全量が適正な価格で取引され、関係者が安心して事業を営めるよう、強力な対策を国が前面に立って進めてほしい」と述べ、国に責任ある対応を求めました。
 そのうえで、「東京電力による相次ぐ不祥事やトラブルで県民は不安に思っている」と述べ、県民目線に立って指導・監督するよう国に求めました。
 また、県農業協同組合中央会の菅野孝志会長は、「十分に対話せず理解が深まらない中で一方的に海洋放出が決定された。国や東電と県民・国民との信頼関係は完全に失われており、重く受け止めるべきだ」と国の対応を批判しました。
 さらに、県商工会議所連合会の渡邊博美会長は、「原発事故から10年たっても風評被害は払しょくされていない。後から賠償するのではなく、一定期間国が買い取るなど一定の収入補てんを行い、関係者がやる気をなくさないための支援を検討してほしい」と訴えました。
 国は、ワーキンググループの議論などをもとに、年内をめどに中長期的な取り組みの行動計画をまとめる方針です。
 会合が終わったあと、福島県商工会議所連合会の渡邊博美会長は、「東京電力による風評被害の賠償は、実害の証明がないとできないとされているためこれまでも賠償を求める側の負担になっており、こうしたやり方を踏襲するようでは『絵に描いた餅』になってしまう。賠償を先取りすることで漁業者や仲買人のモチベーションにつながるので、まず賠償請求の方法のあり方を国が示すべきだ」と述べました。
 会合が終わったあと、福島県農業協同組合中央会の菅野孝志会長は、「課題はたくさんあるが、しんしに向き合おうという姿勢は感じた。国は、今後もひざ詰めで意見交換する場を増やしていってほしい」と話していました。
 その後、ワーキンググループはいわき市でも行われ、漁業関係者が出席しました。
 福島県魚連の野崎哲会長は「福島県魚連としては反対という立場からワーキンググループに参加したい。関係者の理解がないままの海洋放出の決定になんともやりきれない思いがある」と述べました。
 また、福島県水産加工業連合会の小野利仁代表は「2年後の海洋放出が決まり、コロナの影響かもしれないが、風評が発生したのではないかという例が現場からすでに出ている。2年後ではなく、早急な対応が必要で、今後、全国の消費者が福島の魚の安全性を理解できるような取り組みが重要だ」と述べました。
 会議の後、江島潔経済産業副大臣は、「反対や批判の声は真摯に受け止めたい。海洋放出までの2年間に最大限の努力をして関係機関の理解を得るとともに、全国民や海外に向けて安全性を発信していかなければならない」と述べました。
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