[2021_06_16_02]原発処理水「海洋放出」決定で海外との取引が中止に すでに風評被害に直面 宮城・石巻市の水産加工会社(KHB東日本放送2021年6月16日)
 
参照元
原発処理水「海洋放出」決定で海外との取引が中止に すでに風評被害に直面 宮城・石巻市の水産加工会社

 福島第一原発事故で発生した放射性物質を含む処理水を巡り、政府は今年4月に海洋放出の方針を決定しました。海洋放出が始まるのは約2年後の見通しですが、宮城県内の水産加工会社では海外との取引が中止になるなど、すでに風評被害に直面しています。
 宮城県石巻市の水産加工会社「ヤマナカ」。国内市場に加え、アメリカや香港、シンガポールなど、13の国と地域にカキやホタテなどを輸出しています。津波で大規模半壊しましたが、2カ月後に営業を再開。復興するためには、海外での販路拡大が重要と考え、海外バイヤーを招いた商談会に参加するなどして、この10年輸出を強化してきました。
 ヤマナカ高田慎司社長「日本のマーケットは、これから間違いなく減少していくことが分かり切っているので、何とか海外に実績を作りたいなと思いますね」
 福島第一原発事故の影響で禁輸措置を続ける国はあるものの、海外市場の開拓は着実に実を結び、昨年度の売り上げはコロナ禍でも約5億3800万円と、震災前の2億円から大幅に増加しました。
 しかし、今、原発事故の風評被害に直面しています。

 復興のため海外販路を拡大 「早く対応を…もう風評被害は起きている」

 今年4月、政府は福島第一原発の原子炉の冷却作業に伴い増え続けている放射性物質トリチウムを含んだ処理水について、2年後には保管するタンクが満杯になる見通しであることから、海に放出して処分することを決定しました。
 海洋放出にあたっては、トリチウムの濃度を国の基準の40分の1、WHO=世界保健機関が示す飲料水の基準の約7分の1まで薄めて安全性を確保します。
 しかし、ヤマナカには海外の取引先から問い合わせが相次ぎました。
 ヤマナカ高田慎司社長「ネットで拡散しますからね。世界中に瞬く間に取り引き先の国から問い合わせがありますよね。香港、シンガポール、台湾。大丈夫か?みたいな話」
 すでに香港では、「日本無汚染生カキ」などと書かれたチラシも掲示されているといいます。汚染されていない日本のカキとして売り出されているのは関西地方産のカキです。つまり、日本産のカキの中には放射性物質に汚染されたものがあるという誤った認識、風評が消費者の間で広まっているのです。
 ヤマナカ高田慎司社長「(Q宮城から送ったものは)汚染カキです。香港に暮らす人は、そういう認識を持っている。 誰も買わないわけです、もう」
 ヤマナカでは、香港の日系スーパーへカキのむき身を納める契約が決まっていましたが、海洋放出の政府決定を受け白紙になりました。さらにシンガポールとロシアとの取り引きも中止に。
 ヤマナカ高田慎司社長「風評をどうやって正すのか、現地メディアとの何か連携があるのかとかありますよね、早くしてほしいですよね、もう風評被害は起きているんです」
KEY_WORD:汚染水_:FUKU1_: