[2021_06_18_05]中国の原発・台山1号機で燃料破損事故 原子力安全局が燃料破損を確認 中国国家原子力安全局がコメントを公表 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年6月18日)
 
参照元
中国の原発・台山1号機で燃料破損事故 原子力安全局が燃料破損を確認 中国国家原子力安全局がコメントを公表 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 中国国家原子力安全局(以下、原子力安全局・日本の規制委に相当)が燃料破損が起きていたことを明らかにした。しかし公式に記者会見をしたというわけではなく、「コメント」を発表したという。情報の出し方としては、極めて問題のある方法である。
 記者会見であれば記者が質問をぶつけることも可能だが、一方的なコメント発表では真相に迫れない。
 こうした対応が中国の原発のリスクになっていることを中国は自ら認識すべきだ。
 この項では、主に原子力産業界の「ワールドニュークリアニュース」が6月17日に配信した「Fuel failure confirmed at Taishan 1」を元に構成した。
 原子力安全局の見解をそのまま伝えているので、紹介します。
 後日、この内容に関して、どう読み解くかを考える文章を掲載します。

https://www.world-nuclear-news.org/Articles/Fuel-damage-confirmed-at-Taishan-1

 原子力安全局が確認したところによると、台山1号機(EPR型炉166万kW)の一次冷却系における希ガス濃度が上昇したのは、複数の燃料棒に損傷が生じたことが原因としている。「原子炉の一次冷却系における冷却材の放射能濃度の上昇は、主に損傷した燃料棒に関係している」と述べた。 これは「よくある現象」で、発電所の運転上の技術仕様の要件を満たしているから問題はないという。一方、EPRを設計したフランスのフラマトム社は今週、EPRは「性能上の問題」に直面していると述べていた。 このコメント発表は、6月13日に出されたもので、中国科学院原子力総局(CGN)は「台山1号がフル出力で運転されており、放射線の放出はなかった」と発表している。
 台山原発の30%を所有するフランスのEDFは翌14日、EPRの原子炉の一次系で特定の希ガス(クリプトンとキセノン)の濃度が上昇したとの報告を受けたと発表した。ただし、「原子炉運転操作手順において既に検討された公知の事象」であるとしている。

中国側発表の内容

 原子力安全局の広報担当者は、「核燃料製造、輸送、装荷などの各過程において、制御が不可能な要因の影響を受け、運転中に少量の燃料棒が損傷することは避けられないことであり、これはよくある現象だ」と述べた。また、「関連するデータによると、世界中の多くの原子力発電所が燃料棒に損傷を受け、運転を続けています。」とも主張した。
 「現在、原子力発電所は、技術仕様の要件を満たし、安定運転が可能な範囲で運用上の安全性が確保されている、としている。
 原子力安全局は、台山1号の炉心にある6万本以上の燃料棒のうち、およそ5本が被覆管に損傷を受けていると推定している。「損傷を受けた燃料棒の割合は全体の0.01%未満であり、設計上想定された燃料集合体の最大損傷率(0.25%)よりもはるかに低い」としている。
 核燃料は、高温、化学腐食、放射線損傷及び物理的応力が常に作用しており、燃料集合体の健全性を損なう可能性のある苛酷な環境で運転されている。したがって、炉心内の燃料集合体の運転制限は、その破損のリスクがまだ低い燃焼度レベルに規制されている。
 燃料「損傷」とは、被覆管が破損し、燃料セラミック(ペレット)から原子炉冷却水に放射性物質が漏出した状態をいう。被覆管から原子炉冷却材への最も漏れやすい放射性物質は、核分裂生成ガス及び揮発性元素、特にクリプトン、キセノン、ヨウ素及びセシウムである。
 燃料の漏えいは、原子炉の運転に大きな影響を与え、(潜在的に)発電所の経済性にも大きな影響を与えるが、発電所の安全性に直ちに重大なリスクをもたらすことはほとんどない。このため、一次冷却水の監視を継続して行い、漏れが発生した場合には迅速に検知するようにしている。放出される放射能の許容レベルは、燃料の継続的な安全運転を考慮した仕様に対して厳しく規制されている。
 国際原子力機関(IAEA)のデータによると、原子力産業界において、これまでに大幅な性能改善を行い、燃料破損率を1986年から2006年までの20年間で約60%低下させ、燃料棒100万本(100万kW級原発約20炉心分)当たり平均約14件の漏えいにとどまるようになった。

安全局は台山原発では放射能漏れなしと主張

 原子力安全局の広報担当者は、台山で放射性物質が漏えいしたとの報道について、一次系統の放射能レベルの増加は放射線漏れ事故とは全く異なると述べた。
 「一次系は原子炉格納容器内にある。原子炉格納容器がバリアとしての原子炉冷却系の圧力バウンダリと、格納容器自体の密閉性が要件を満たしている限り、放射能が環境に漏れる可能性はない。」とした。
 また、原子力安全局が発電所の運転を継続するために外部での放射線検出の許容限度を引き上げることを承認したとする報道も否定した。
 原子力安全局は発電所の一次系の化学と放射化学の技術仕様の中で、原子炉冷却材の希ガスの線量率について関連する許容限度量を検討し、承認したと述べた。
 「この制限は運転管理に用いられ、原子力発電所の外部放射線検出とは無関係である。」
 その上で原子力安全局は次のことを行っているとしている。
(1)台山1号機の一次系の放射能レベルを綿密に監視し続け現地の監視
と周辺環境の監視を強化する。
(2)1次系の放射能レベルを厳密に管理するための措置を講じる。
(3)1号機の安全運転を確保するために運転技術仕様を厳守するよう、
運転部門を指導・監督する。
(4)IAEA及びフランス原子力安全規制当局との連絡を維持する。

 台山原発計画

 台山1号と2号は運転を開始したEPR型原子炉の最初の2基である。熱出力175万kWの原子炉は、それぞれ2018年12月と2019年9月に商業運転を開始した。香港の西約140キロメートルにある台山計画は、CGN(51%)、EDF(30%)と中国の公益事業である広東エネルギーグループ(19%)のジョイントベンチャーであるTNPJVCが所有している。
 現在も2基が建設中で、完成すると合計668万kWの発電量になり、主に香港、マカオ、深センなどに供給される。
KEY_WORD:中国原発_放射性ガス放出_: