[2021_08_02_01]中国台山原発の危険性は 中国の原子力運営能力は燃料損傷でも運転継続(下) 「福島第一原発事故の教訓」「中国の燃料損傷と運転継続」 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年8月2日)
 
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中国台山原発の危険性は 中国の原子力運営能力は燃料損傷でも運転継続(下) 「福島第一原発事故の教訓」「中国の燃料損傷と運転継続」 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)


◎ 福島第一原発事故の教訓

 福島第一原発震災については、これまで多くの裁判で「経営層の津波評価及び対策の不備」が第一の原因として指摘され、これまでの裁判でも多くは認定されてきた。
 また、原発の安全維持確保に必要な認識が欠けていたことも指摘されている。具体的には次の通り。

1 安全意識の問題については
 「原子力では継続的に安全性を高めることが重要であるとの認識が不足していた。規制当局の要求を満たすだけで十分と考え、自ら安全性を高める意識が不足した。
 過酷事故対策はこれまでに実施したアクシデントマネジメント対策で十分と過信した。」

2 技術力の問題としては
 「外的事象(自然現象やテロ)によって全電源喪失が発生し過酷事故に至るリスクが大きいと考えなかった。限られたリソースの活用や短期間で合理的な安全強化策を考える力が不足した。海外情報や他発電所のトラブル事例から有益な対策を見つけ出す力が不足した。」

3 対話力の問題としては
 「過酷事故対策の必要性を認めると、現状の原子力発電所が十分に安全であることを説明することは困難になると考えた。」
 実は、この文章の出典は東京電力のホームページだ。「事故の根本原因分析」と題してまとめられている。
 現在の東電が、これに準じて対策が出来ているとは到底考えられないので、未だに柏崎刈羽原発の再稼働は不可能なままであるのかも知れない。もっとも、これは「社内の意識において」という意味でだが。

◎ 中国の燃料損傷と運転継続

 さて、中国の原子力運転管理の問題だが、台山原発1号機の燃料損傷は、中国発で明らかになったものではない。
 台山原発を建設し、発電所運転会社、台山原子力合弁会社の株式の一部を保有するフラマトムの子会社が燃料損傷のまま運転を継続するという台山電力の決定に不安を覚え、米国NRC(原子力規制委員会)に助言を求めたところ、それを察知したCNNがスクープしたものだ。
 米中の緊張関係も背景にあり、米国側の報道は「中国が危険な運転をしている」との論調であるのに対抗して中国側は「保安基準内だから問題ないのに殊更不安を煽っている」と反撃しているという構図だ。
 これは極めて危険な事態だ。
 中国当局からの情報提供は、米国の報道に対抗するものであり、多分にバイアスがかかっている。つまり安全神話そのものだ。
 フランス紙フィガロによれば、もともとの規制値を倍に引き上げても運転を強行しているのが中国側の対応だという。
 原発を止めれば威信に関わる、などと中国が思っているのならば、思い上がりも甚だしいと言わなければならない。
 原発の安全性に最も有害で危険なのは、この思い上がりである。
 実際、燃料損傷が継続しているのに運転を強行しているのだから、それ自体が「原子炉工学的にも」危険だ。
 燃料損傷が複数の燃料棒(中国側でさえ5本の損傷を認めている)にわたっている場合、その原因は偶発的な欠陥(製造ミスや溶接ミスなど)とは考えにくく、燃料集合体ごと物理的に損傷を与える何らかのダメージを受けたか、炉心の水流が設計とはことなる偏流を生み出し、それが過度に燃料棒を摩耗させた可能性がある。そのような場合、燃料棒が連続的かつ大規模に破損する可能性は高まる。
 そうなった場合、未然に検知して停止する余裕がないかも知れない。
 燃料の連続的破断が発生した場合、炉心内部で水蒸気爆発が連続的に生じ、燃料破損から炉心損傷、場合によっては炉心溶融にも繋がりかねない。
 まさか「コアキャッチャー等の過酷事故対策があるから大丈夫」などと過信しているわけではないだろうが、そのような事態になるずっと前の今、原子炉を止めて点検するという最も基本的な安全対策を取るべきなのである。
 原発事故により最も大きな影響を受けるのは発電所の職員だ。だからこそ「現場の運転員に予定外運転停止を含む安全上必要な行動を取る権限」を与えていなければならないが、果たして中国にそのような対応が出来ているのだろうか。
 中国には、安全対策情報を速やかに提供させることを求める必要がある。

 ※この原稿を作成した後の7月30日、中国広核集団(CGN)は中国広東省の台山原発1号機を停止して損傷した燃料を交換すると発表した。
 CGNは、台山1号機の燃料損傷は「技術仕様の許容範囲内であり、安定運転を継続できる」と付け加えた。
 しかし点検を行って燃料損傷の原因を突き止め、損傷した燃料を交換することを決定し、運転を停止したと発表した。
 運転停止後に点検を行い、損傷したすべての燃料棒が単一の燃料集合体の一部なのか、異なる燃料集合体に属しているかを確認するとしている。
なお、この情報は、 World Nuclear News及び時事通信、AFPから得ている。

KEY_WORD:中国原発_放射性ガス放出_:KASHIWA_:FUKU1_: