[2021_08_05_01]洪水時の河口沿岸セシウム濃度変化、予測モデル使い再現に成功(福島民友2021年8月5日)
 
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洪水時の河口沿岸セシウム濃度変化、予測モデル使い再現に成功

 福島大環境放射能研究所の高田兵衛特任准教授(44)=海洋化学=や脇山義史准教授(40)=水文地形学=らの研究チームが、2019年10月の東日本台風の通過により、宮城県の阿武隈川河口沿岸域の海水で起きた放射性セシウムの濃度変化を、予測モデルを使って再現することに成功した。台風に伴う洪水で上昇したセシウム濃度は、海水の希釈効果で2〜3週間で洪水前の濃度に戻ったという。濃度変化による生態系への影響は確認されなかった。
 4日までに国際学術誌「ケモスフェア」に発表した。セシウムの濃度変化は、阿武隈川から流出した土砂に含まれる原発事故由来のセシウムが海水に溶け出したためで、研究チームは「荒天などのため調査が難しい洪水時に、セシウムがどう動くかを探る上で重要な結果だ」としている。
 研究チームによると、川の土砂に含まれるセシウムは、海水に触れると溶け出すことが知られている。研究チームは、阿武隈川下流の土砂を使った実験で、土砂のセシウムの5.5〜11%が海水に溶け出すことを突き止めた。これを基に予測モデルをつくり濃度変化を再現した。セシウムの濃度は1リットル当たり数ミリベクレルから45〜125ミリベクレルまで一時的に20〜30倍に上昇したが、2〜3週間で元に戻った。この予測は実際の観測値と合致した。
 高田氏は「生物の体内に蓄積するなど、濃度上昇による生態系への影響に注意していたが、海水の浄化作用が早かったため影響は確認できなかった」とした。
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