[2021_09_10_04]人工衛星の衝突がもたらすもの(島村英紀2021年9月10日) |
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2009年以来22年ぶりに大規模な事故が起きた。といっても地上の話ではない。はるか上空の出来事だ。22年前の事件とはロシアの軍事衛星「コスモス2251号」が米国の通信衛星「イリジウム33号」と衝突して双方とも壊れたことだ。 今回は「加害者」も「被害者」も立場上、大きな声では騒げない。ともに、明らかには出来ないワケありの衛星だ。 被害者は打ち上げたばかりの中国の軍事衛星「雲海1号02」。加害者はロシアのスパイ衛星「ツェリーナ2号」の打ち上げに使われたロケットだ。事件は3月に起きていたが8月に明らかになった。米国・ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの分析だ。 スパイ衛星や軍事衛星がなにをしていたのかは国家機密で、明らかになっていない。 打ち上げに使われたロケットは宇宙ゴミ(スペースデブリ)になった。実際、途方もない数の宇宙ゴミが、地球のまわりを飛び回っている。これらは役目を終えた人工衛星や、人工衛星の打ち上げに使ったロケットの破片だ。中国はこのほか敵の軍事衛星を打ち落とす意図的な破壊実験も行っている。宇宙ゴミを飛躍的に増やすだろう。 ESA(欧州宇宙機関)の推定によると、1〜10センチのデブリが90万個、1ミリ〜1センチのものなら1億2800万個もある。その総質量は1万トンに近づいている。 これらの宇宙ゴミは時速2万7600キロもの猛スピードで飛び回っている。弾丸の速さの100倍以上だ。なんでも撃ち抜いて破壊してしまう。 げんにこの5月にはISS(国際宇宙ステーション)のロボットアームに衝突して破壊した。幸い損傷はアームと周辺の一部に限られていて大きな影響はなかった。衝突したのは、ごく小さなデブリだった。しかし場所によっては、そして人体を直撃すれば、こんなことでは済むまい。 その上、イーロン・マスクのスペースXは、「スターリンク計画」で最大4万2000基の人工衛星を打ち上げる予定だ。この衛星群で世界中のユーザーに高速インターネットを提供するためだ。2019年から人工衛星を打ち上げていて、すでに1500基もの人工衛星が軌道上にある。宇宙の半分以上が個人のものになる。事実上の独占だという非難もある。 一方、天文学者は、衛星群が天文研究に被害を与えかねないとの懸念を表明している。大型の高性能望遠鏡は大量の商用衛星によってすでに大きな影響を受けている。これ以上飛躍的に増やすことに反対しているのだ。 衛星が互いに数キロ以内という衝突の紙一重ですれ違うのは、いまでも毎日のように発生している。人工衛星の数が10倍になれば、衝突事故は100倍になる理屈だ。 その他にもちろん宇宙ゴミの問題もある。 いま現在で、地球に近い軌道では23000個ほどのソフトボール大以上の宇宙ゴミは追跡されている。しかし、遠いものやもっと小さいサイズのものは追跡できていない。 しかしISSの例のように、小さくても速度が大きいので金属板を突き破るなどの重大な損傷を与える可能性が大きいのだ。 |
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