[2021_09_16_08]「核燃料サイクル」中止は核武装疑惑を招く? 真逆の論を展開する産経新聞…甚だしく、的外れ 核燃料サイクル政策を止めるとプルトニウムは「資源」から「核のゴミ」になる 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年9月16日) |
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産経新聞が9月14日に配信した記事「核燃料サイクル維持を 電事連が声明」に妙な指摘があったので紹介します。 ◎ 記事の主要な点は、電気事業連合会(電事連)が14日に、河野太郎氏がかねてから述べている「核燃料サイクル政策を見直すべき」との主張について、今回の総裁選挙においても、高速増殖炉「もんじゅ」が廃炉になり巨額の費用がかかる核燃料サイクル政策について「きちんと止めるべきだ」と発言していること、「そろそろ核のごみをどうするか、テーブルに載せて議論しなければいけない」とも指摘していることについて、「使用済み核燃料を再処理して繰り返し使う「核燃料サイクル」を維持すべきだとする声明」を発表したことにあるのだが、この核燃料サイクル政策を推進する理由について次のように書いている。 引用開始 『資源小国の日本は原発で発生する使用済み燃料を再処理し、取り出したプルトニウムやウランを燃料として再利用する核燃料サイクルを原子力政策の基本としてきた。 核武装への疑心暗鬼から新燃料用に回収したプルトニウムの備蓄を批判する国もあり、核燃料サイクルをやめればこうした指摘に論拠を与えることになりかねない。』 引用終了 ◎ まず大きな間違いは、核燃料サイクルは高速増殖炉を基幹として回るプルトニウムサイクルを前提として位置づけられた政策であり、軽水炉でプルサーマルを細々とやっている程度の現状は、そもそもサイクルにならず、河野氏が指摘するとおり単に巨額の費用がかかるだけの愚策になっていることだ。 ウランについては、使う見通しさえ立っていない割に分離精製、保管管理だけで大変なコストと労力が掛かっている。 また、「資源小国」の考え方も余りにも古く、現在では再生可能エネルギーだけで将来は日本でのエネルギーをまかなえる見通しも出来てきた。 ◎ さらに主要に間違っている点は、「核武装」のところだ。 国内で核武装容認論をぶち上げていた人は、安倍晋三元首相など数多い。 もともと荒唐無稽な話ではない。 「謂れのない濡れ衣」などではないのである。 核武装への懸念は、中国・韓国だけではない。 核不拡散上も「使うあてのないプルトニウムは保有しない」とは国際公約であり、世界への約束(条約上は特に米国との約束)である。 だからこそ使うあてがあるかのように核燃料サイクル政策を無理矢理に維持してきた。 核燃サイクルは核武装疑惑への回答の1つであったことは事実だ。 ◎ この関係を正確に言うならば、「核燃料サイクル計画を止めた段階で保有するプルトニウムの行き先について説明が求められる」という位置づけである。 だから、核燃料サイクル政策を止めた際に、プルトニウムは「資源」から「核のゴミ」(処分すべき放射性物質)になるので、河野氏の指摘する「核のゴミをどうするか」議論しなければならないということだ。 ◎ 核武装との関連で言えば、プルトニウムを保有しない政策を採るならば核兵器転用も出来ないのだから、核武装議論は終結する。(ただし米国製核兵器の配備を容認するとか、シェアするなどの議論はまた別にあるが) 産経新聞の記事はそういう意味でも甚だしく、的外れである。 |
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