[2021_10_18_02]低廉で安定的に大規模電力を送ることが可能な直流送電システムの構築| 「エネルギー基本計画」に対するパブリックコメント (その3) (4回の連載) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年10月18日) |
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◎ 5頁「日本のエネルギー需給構造の抱える課題の克服」については、大きな見当違いをしている。 「高度成長期に構築されたエネルギー設備の高経年化が進む中にあって、自然災害の大規模化といった要因も重なり、高度成長期以降では類を見ない大規模停電を経験し、改めて安定供給の重要さを再認識した。」との記述については、おそらく北海道の苫東厚真火力発電所の遮断から北海道全域の停電や、台風19号による千葉県内の大規模停電、あるいは降雪の影響による停電などを想定しているのだと思われる。 しかしこれは系統連系の作り方の問題であり、対策ははっきりしている。 ◎ 例えば北海道電力の場合は、北本連系線が脆弱な上に、苫東厚真火力発電所に大きな負荷がかかった状態で長期間放置し続けたことが原因である。 自然災害による大規模停電というのであれば、東日本大震災をまず取り上げるべきであるが、この項目でそれを示唆する表現は見られない。 後半において「SSのレジリエンス強化」(89頁)において触れられているが、あくまでも災害時の停電リスクとしてしか書かれていない。 ◎ また、マスタープランに関しても「脱炭素化と安定供給に資する次世代型の電力ネットワークと分散型電力システムの構築」と「電力システムの強靱化」(95頁)に記載があるが、マスタープランのような全国電力網の再構築は「エネ基」の前提として構築することを進めるべきだ。 ◎ この項目において重要なのは、今の送電システムや電力システムの連系について、数十年規模で改革を進めるに当たっての方針を明らかにすることである。 北海道から九州まで、日本の系統連系は9電力体制の下で極めて脆弱なままに放置されてきた。 特に東西連系は、50サイクルと60サイクルで周波数が異なる問題を頂点に、全く無策である。 世界の潮流は、超高圧直流送電により再生可能エネルギーの電力を既存の系統に連携しつつ、大電力をロスなしで国内外に送るシステムを構築するための投資である。 ◎ 日本はこの分野において全く遅れを取っており、国内メーカーは海外の超高圧直流システム構築事業に参加しているが、国内にはそのような事業は存在していない。 北海道から九州まで、超高圧直流送電システムを公共送電線として構築し、これに各電力会社が低廉なコストで接続できれば、容量問題は大きく解決に向かう。 そのことは、日本の電気料金が「震災以降高止まっている」ことに対しても解決策になる。 電力ロスが大幅に低減し、従来のロス率3〜4%に対して1%程度、原発4基分程度の低減効果がある。 ◎ また、電源偏在に対する効果は高く、九州の太陽光発電が余剰になっても北海道まで送電できるし、オホーツク海の風力を夜間に大都市に送ることも出来る。 蓄電との併用で、再生可能エネルギーの設備を有効利用できるだけで大きな利益を生む。 今後のデジタル化の進展により、ますます直流電力の広域連系はプラスに働くし、情報通信産業をはじめ、社会全体における新たな電力消費の拡大にも対処できる。 ◎ 特に電気自動車の普及が進むと、充電システムの構築が必須となるが、直流送電システムと高速道路網を一体化すれば、充電ステーションを高速道路沿いに直ぐに展開できる。 ◎ 送電システムは高圧交流電源の場合、100キロメートル当り1000億円程度と見られるが、直流システムの場合は1300億円程度とされるから、さほどの差はない。 そのうえ交流と異なり巨大な変電所がなくても小型のステーションに給電できるので、全体のコストは遥かに有利である。 電気料金の抑制が日本の産業競争力に直結する重要な課題であるとするならば、今すぐ取り組むべき事は、巨大鉄塔と山間部を切り開いて構築される高圧送電線網をやめて、低廉で安定的に大規模電力を送ることが可能な直流送電システムの構築である。 ◎ これは、来たるべき東京直下地震や南海トラフ、或いは日本海溝沿いの巨大地震による災害対策においても必要な対策だ。 4つの島が分断されている現状を、直流送電システムで繋げば、大規模災害時でも広域の連系が直ぐに可能になる。 また、大陸側とも直流送電システムを繋げば、大陸側から再生可能エネルギーによる電力の輸入も可能になる。 (その4)に続く |
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