[2021_12_25_04]公聴会では明確に反対する意見がほとんどだったことを明記すべき 東京電力の汚染水処理に関連して 「放射線影響評価報告書」に対する「意見募集」に送った文書を紹介 (中)(3回の連載) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年12月25日) |
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5.国の委員会の報告書はあくまでも参考意見に過ぎない 3P「はじめに」 『国の多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会は、2020年2月に報告書をとりまとめ、5つの処分方法案については、モニタリングの実現可能性をも含む多角的な検討を行った上で、海洋放出および水蒸気放出が現実的な選択肢であり、その中でも、海洋放出がより確実に実施可能であるとの結論を示した。』 ◎ 国の委員会の方針は、あくまでも参考意見に過ぎない。事故の収束作業の責任は東電にある。加害者が同じく事故の責任を有する委員会の方法案を取り入れて新たな加害(そのまま)活動をするなど、ありえないことである。 まず、被害者の意見を聞くべきであり、それは第一に福島県の被災者及び漁業、農業の生産の場を奪われた人々である。 また、小委員会は公聴会等の意見を一切無視しており、最初から結論ありきなのは誰が見ても自明なことである。このような行為を続けていれば何時までも東電は信頼を得ることは出来ない。 6.タンク貯蔵のリスクなど「為にする論」である 3p「はじめに」 『同委員会は、タンクによる長期保管についてタンク増設の余地が限定されていることや、長期保管に伴う老朽化や災害等による漏洩のリスクの高まりも指摘した。』 ◎ これは明確にウソである。そうでなければミスリードである。 敷地の状況を把握しているのは東電だけであり、委員会に対して所与の条件として「敷地に余裕はない」と信じこませてしまえば、「与えられた条件では海洋放出しか選択肢はありません」となるに決まっている。 それに加えて「タンクは危険」とまで言うのだから、結論ありきである。 しかし「タンクは危険」も異常な主張だ。タンクの危険性を主張するのは世界中でも事故を起こした東電だけであり、一般産業においてタンクが「危険」などと主張する事業者はいない。 同じ東電であっても例えば、東京湾岸に林立する東電(またはJERA)の火力発電所が所有するタンクは「危険」なのか?。もちろん、「危険です」などと答えるわけがない。 安全性の高いタンクを開発し、地下式又は半地下式で建設することで地震や津波対策を行ってきたのではないか。 ◎ 福島第一原発であれば大型の(35万キロリットル級)タンクを敷地北側内陸部に地下式で8基程度建設し、今あるタンクの水を全て移せば遥かに安全である。 タンクが漏えいしたら、等と、意味のない反論をしているが、漏洩対策をしたタンクの存在も知らないのかと、呆れるばかりである。 第一、海洋放出が始まったら数年でタンクがなくなるのであればまだしも、最終的には放出終了時点までタンクは存在し続ける。半減するのでさえ30年も経ってからと推測される。 いったいどこが「リスク対策」になっているのか。 地上タンクが危険というのならば、今すぐ全タンクを地下式に移行する作業を開始すべきである。 そのような対応さえせずに、長期保管タンクを否定する主要な点に「危険性」を挙げるのは、天に唾するごときものである。 これら委員会の発言を借りて東電の都合を主張しているに過ぎない。 削除すべきであろう。 7.公聴会や意見募集では大半が放出反対だったことを無視している 3P「はじめに」 『説明・公聴会を開催するとともに、書面を含め、広く意見を募集した。 その結果、提出された意見の中には、ALPS処理水の海洋放出が周辺環境に与える影響などに対する懸念も示された。』 これも都合のよいつまみ食いである。 公聴会において出された意見のほとんどは環境への影響などの問題点を指摘しての、反対意見だった。 「懸念」どころか、明確に反対する意見であったことを明記しなければウソである。 8.権限のない閣議決定に従う必要などはない 3P「はじめに」 『国は、これらの検討や意見を踏まえて、今般、ALPS処理水の取扱に関して、「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」(2021年4月13日、廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議)にて、安全性を確保した上で海洋放出するとの基本的方針を示した。当社は、この国の方針を踏まえ、同年4月16日に、「多核種処理設備等処理水の処分に関する政府の基本方針を踏まえた当社の対応について」を公表』 ◎ 権限のないものの「閣議決定」など決定の名に値しない。 この会議体「関係閣僚会議」はあくまでも情報交換を目的としたものでしかない。何らかの政府決定を行える会議体ではない。ましてや法的拘束力を持つ権限も有していない。 仮に法的拘束力を持つ決定をするというのであれば、法律を定め、国会で審議し、議決しなければならない。そうであればこその民主的手続きである。勝手に決めて国民に結論を押しつけるなどあってはならない。 しかし東電は、そのような非民主的決定でさえ根拠として私たちや被災者にも押しつけようとしている。 断固反対すべき理由の1つである。 まったく東電体質(自ら責任は取らず国などの権威の陰に隠れる)そのものだ。 「多核種処理設備等処理水の処分に関する政府の基本方針を踏まえた当社の対応について」の撤回を求める。 9.汚染水を「安全な水」?とんでもないデマである 4P「はじめに」 『ALPS処理水の海洋放出にあたっては、法令に基づく規制基準等の遵守はもとより、関連する国際法や国際慣行に基づくとともに、更なる取り組みにより放出する水が安全な水であることを確実にして、公衆や周辺環境、農林水産品の安全を確保する。』 ◎ この考え方は本質的に誤りである。 福島第一原発事故により環境中に放出された放射性物質の影響は、既に広範囲にわたり生じており、とりわけ野生動植物への蓄積による影響は多くの科学論文により示されている。 この状況下に追加放出されるのがトリチウムを始めとした放射性物質である。 そのため、既に所与のものとして生じている影響に加わるので、汚染水の放出に限った影響を切り出すことは極めて困難であり、事実上不可能である。 それに対して既存の知見の不足する水処理をおこなった上での排出が、真に環境に与える影響を検出することが如何にして出来るのか、科学的に説明すべきである。 ◎ 特に、東電が前提としているのが「安全な水である」ことを前提としていて、これは「法令に基づく規制基準等の遵守」等で確保できるとしている点に大きな問題がある。 最初から安全な水を何億トン放出しようとも安全であるのに変わりはなく、ことさら分析・評価するまでもない。科学的には普通そう考えられる。 そのような前提に立ちつつ、いかなる「安全の確保」なのか全く理解できない。 悪く言えば馬鹿にしているのか、と思う。安全確保の前提条件が安全な水などと、いったいどういう発想で記述できるのか。この部分は全部撤回し、書き直すべきである。 ◎ ALPS処理をおこなえば安全な水になる、などと、ウソで誤魔化すのは止めるべきだ。 しかも見学者に対してALPS処理水を瓶に入れ、外からガンマ線測定器をかざして「針が動かないでしょう」などと、素人だましをしている東電である。 (ALPS処理水に含まれるトリチウムを除く放射性物質の濃度が告示濃度以下に下がっていてトリチウムのみ数万ベクレル/リットルの濃度であれば、トリチウムはベータ線しか出さず、さらにベータ線は瓶で遮蔽されているので外部から測定など出来ず、更に測定している計器がガンマ線を測定できないベータ線測定器だったので針が動くわけがない。動いていたら別の事件、例えば別の放射線源が側に落ちていた、などになっていたであろう)。(下)に続く |
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