[2022_02_11_09]宇宙から落ちてきた黒ダイヤ 26〜38億年前に誕生か(島村英紀2022年2月11日)
 
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宇宙から落ちてきた黒ダイヤ 26〜38億年前に誕生か

 ダイヤは普通はキンバーライトの中で見つかる。キンバーライトとは固化したマグマで、垂直に近いパイプ状の形になっている陸塊だ。キンバーライトは安定した大きな岩石の陸塊で、その根がマントルにまで食い込んでいるので、その後のプレート運動の影響をほとんど受けない。
 キンバーライトという名前は南アフリカ共和国・北ケープ州の州都キンバリーから来ている。以後、ほかで見つかってもキンバーライトと呼ばれている。南アフリカ共和国のほか、ロシア、ジンバブエ、アンゴラ、中国、米国、カナダなどにある。
 ダイヤモンドは、巨大なキンバーライトをくまなく探しても、ごくわずかしかとれない。
 地球深部でダイヤが作られ、噴火で浅部に運ばれた。具体的には数億年前に起きた造山運動でキンバーライトが作られた。それゆえダイヤの分布は大陸奥地の古い地質条件「安定陸塊」が少なくとも5億年は存在している地域に限られている。
 ちなみに日本列島には安定陸塊はないし、そもそも日本列島ができたのは2000万年ほど前だ。46億年の地球の歴史から見れば新しい時代だから、ダイヤは出ない。ダイヤは世界でも限られた場所だけに出るのだ。
 しかし、ダイヤはこのほかにも見つかることがある。宇宙から隕石(いんせき)として落ちてきたものに稀に含まれるダイヤがあることだ。
 カーボナードというのが落ちてきた隕石に含まれるダイヤの一般的な呼称だが、ブラックダイヤモンド(黒ダイヤ)といわれることもある。多くは細粒だが、たまに大きなダイヤが見つかる。
 このたび、競売大手のサザビーズがアラブ首長国連邦(UAE)ドバイで555.55カラットのブラックダイヤモンドを公開した。身につけるには大きすぎるが、高値がつくに違いない。サザビーズが予想する最低落札価格は約7億8000万円だ。
 このダイヤは中東の手のシンボルの「ハムサ」を象徴する。ハムサはお守りの印でアラビア語で「5」を意味する。555.55カラットの重さに加えて、4年の歳月をかけてカットされた面も、きっちり55面体となっている。555.55カラットは約111グラムだ。
 このダイヤはわずかな窒素や、星間に豊富に存在する水素、隕石だけに見られるミネラルの窒化チタンが含まれている。そのために黒い。間違いなく宇宙起源なのだ。26億〜38億年前に誕生したものと思われている。
 キンバーライトではなくて地表に近い沖積堆積物の中から見つかった。黒ダイヤの二大産地であるブラジルか中央アフリカ共和国で発見された可能性が高い。この二つの国は10億年以上前はつながっていたひとつの土地で、ロディニア大陸という超大陸だった。このダイヤが地球に落ちてきたのはこの時代だったかもしれない。
 なお、このダイヤは20年間、個人所有で公開されなかった。どこで取れたものかも明らかにされていない。
 空から落ちてきたものだけに、キンバーライトがない日本でも、今後、黒ダイヤが見つかるかもしれないのである。
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