[2024_01_22_10]<社説>泊再稼働審査 北電はリスク見据えよ(北海道新聞2024年1月22日)
 
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<社説>泊再稼働審査 北電はリスク見据えよ

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 北海道電力泊原発の再稼働に向けた原子力規制委員会の審査は7月に丸11年を迎える。福島事故後の新規制基準下で異例の長さだ。
 慎重な論議は当然としても展望が見えぬ状態が続く。国内で最も火山に近い原発とされるが、その影響評価はまだ初期段階にある。
 北電は先週、審査での説明終了時期を6月までに延期した。日程変更は実に5回目で、当初予定から1年半以上遅れる。
 能登半島地震では停止中の北陸電力志賀原発で不具合が続いた。
 仮に稼働中に深刻な事故が発生していれば、道路が寸断された状態で避難は過酷を極めた。半島の付け根にある泊でも懸念は多い。
 地震も火山も正確に予測できる水準にはない。災害が多発する日本で原発を稼働するリスクを北電は見据えるべきだろう。
 泊原発審査では規制委が2021年7月に「敷地内活断層がない」と確認するまで2年半かかり、火山対策の論議は中断していた。
 だが再開後に北電は最新の火山の知見を反映しない5年前と同じ資料を提出し、規制委から安全意識の欠如を指摘されていた。資料差し替えで本格的に審理が始まったのは昨年1月のことである。
 新規制基準では噴火の火砕流が原発敷地に到達する可能性が十分に小さくなければ運転できない。
 泊原発の半径160キロ以内の13火山のうち、約11万年前に噴火した洞爺カルデラ(現在の洞爺湖)の火砕流堆積物が南東約10キロで確認されている。敷地内に到達した可能性も否定できないという。
 火山モニタリング方法の議論も始まったばかりで、審査はさらに長引くと指摘する声も多い。
 北電は26年12月の再稼働を目指す。斎藤晋社長は先月の記者会見で先端半導体製造ラピダスの千歳操業を視野に「今の設備をしっかり使うとともに再稼働させることが一番の目標」と強調している。
 一方のラピダスは再生可能エネルギー利用を掲げている。再エネと原子力は国のエネルギー基本計画で明確に区分されており、斎藤社長の説明では筋が通らない。
 新電力などの進出が続き、道内の太陽光や風力など再エネ比率は伸びて電力量で約4割に及ぶ。
 北電も新年度にも札幌市や北ガスなどと水素エネルギー製造に乗り出す方向という。出遅れていた再エネ分野拡充に注力すべきだ。
 泊は維持管理費で既に計7千億円超が投じられ、安全対策費の膨張も予想される。北電は廃炉も含め方針転換を模索する時である。
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