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[2025_08_15_03]「原発再稼働」に突き進む日本も他人事ではない…!ドイツの小さな村で放射性物質の「地下水汚染疑惑」が浮上…地域住民たちの怒りが爆発【現地ルポ】 形山昌由(週刊現代2025年8月15日) | ![]() |
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参照元
04:00 全土の問題が、なぜ地域に押し付けられるんだ! 住民はそう怒りを露にした。原発停止を決めたドイツで起きた、「核のゴミ」問題を追う。 最終処分場になった村 ドイツの首都ベルリンから高速道路「アウトバーン」を西へ向けて約3時間。色鮮やかな菜の花が咲き誇る田園地帯を走り抜けると、小高い丘が見えてきた。ここはドイツ北西部にあるニーダーザクセン州の東端に位置する人口1200人ほどの小さな村・レムリンゲンだ。 村内にある施設に近づくにつれて目に入るのは、ドイツ語で「核廃棄物排出、貯蔵施設反対」などと手書きで書かれた横断幕の数々。周辺ののどかさとは似つかない異様な雰囲気を醸し出している。 やがて、鉄のフェンスで閉ざされた巨大な建物群が現れた。核廃棄物の最終処分場「アッセU」(以下、アッセ)だ。 レンガ造りの建物の中央付近には「グリュック アウフ(ご安全に)」と大きく彫られた文字。危険な場所で働く作業員が無事に戻ることを願う言葉である。 建物を撮影しようとカメラを構えると、すぐ横にある守衛所から監視されているような視線を感じる。セキュリティに敏感になるのも当然だろう。この地下深くには膨大な量の核廃棄物が保管されているのだ――。 この処分場を訪れたのは、核のゴミの処分を巡って騒動が起きていると知ったからだ。 ドイツは'11年の福島原発事故をきっかけにアンゲラ・メルケル首相(当時)が脱原発を最終決定し、'23年に最後の原子炉が止まった。 高レベルの核のゴミの最終処分場はいまだ決まっていないが、原発などから出た低〜中レベルの核廃棄物はドイツ国内で埋設されてきた。その一つが、ここアッセだ。 アッセはもともと岩塩鉱山で、'60年代半ばまで岩塩の採掘が行われていた。しかし、岩塩が採れなくなったことなどから閉鎖。その後、国が施設を丸ごと買い取り、核廃棄物の埋設を始めた。 アッセの最終処分場には、連邦放射性廃棄物機関(BGE)が隣接している。広報担当者によると、アッセへの核のゴミの保管は'67年から始まったという。 「『核廃棄物の処分を研究する』との名目で、政府が地中に埋める作業を始めました。岩塩の採掘場を利用して地下750メートルまで穴を掘り、およそ12万6000個の核廃棄物が入った容器を埋めたのです。その体積は4万7000立方メートルに及ぶ。中身は原発、医療、産業界から出た低・中レベルの放射性廃棄物です」 住民が知らぬ間に最終処分場になった だが、処分方法は投棄に近かった。当時の写真には重機でドラム缶状の容器を乱雑に投げ捨てているものや、腐食した容器が写っている。岩塩層が放射線を遮蔽するため、たとえ容器が壊れても外部に影響はないとされていたからだ。研究が目的のため、捨てているようにしか見えないやり方にも、いちいち「放り込み技術」などともっともらしい名前を付けていたという。 その上、埋設を始める際、政府は住民への説明をしなかった。毎日のようにトラックで搬入される大量の金属製容器を不審に思った住民が中身を尋ねても、ロクな説明もせずに追い返していた。 さらに驚くべきことがある。始めは「研究用の施設」という名目だったが、周辺住民に説明のないまま、いつの間にか「継続的な最終処分場」に変更されたというのだ。'78年までの11年間にわたって、核のゴミは埋められ続けた。 政府にとって都合よく進められた核廃棄物の埋設……。しかし'08年にアッセは問題化する。ドイツで核廃棄物の取材を続けるジャーナリストの田口理穂氏が言う。 「州議会に提出された報告書で、核のゴミが保管されている場所に1日当たり1万2000リットルの地下水が流れ込み、その水が核廃棄物に触れて汚染されていることが公になったのです。当然、地域住民からは不安と怒りの声があがり、大騒ぎになりました。 地下水が流れ込んだ原因は、核廃棄物の処分場のある土地が不安定な断層部分に位置しているため、地盤に隙間ができて水が漏れ出したと言われています」 対策として、処分場内で漏れてくる水をポンプでくみ上げることを続けてきた。だが、これで問題は終わらなかった。 昨年、突如として地下水の流路が変わり、処分場のさらに70メートルほど深い場所へ流れ込んでいることが明らかになったのだ。水が移動するということは、ほかの場所で新たな汚染を引き起こしたり、水で岩塩が溶けて地下にある処分場が不安定になることを意味する。 |
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KEY_WORD:最終処分場_: | ![]() |
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