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[2025_08_15_02]ドイツの小さな村で「核廃棄物の保管」を巡る大騒動が発生…!日本が「対岸の火事」と言えない理由「使用済み核燃料はすでにパンク寸前」 形山昌由(週刊現代2025年8月15日) | ![]() |
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参照元
04:00 全土の問題が、なぜ地域に押し付けられるんだ! 住民はそう怒りを露にした。原発停止を決めたドイツで起きた、「核のゴミ」問題を追う。 前編記事『「原発再稼働」に突き進む日本も他人事ではない…!ドイツの小さな村で放射性物質の「地下水汚染疑惑」が浮上…地域住民たちの怒りが爆発【現地ルポ】』より続く。 埋めた核のゴミを地上に移すって…… ドイツで核廃棄物の取材を続けるジャーナリストの田口理穂氏が言う。 「長年にわたる反対運動を受け、 政府はアッセの核廃棄物を取り出し、地上に暫定保管所を作って保管すると決めました。その際、住民側は取り出したものをまったく別の場所へ移動するよう要望しましたが、聞き入れられませんでした。地上部分に保管する場合、地盤が不安定で崩壊する恐れがある上、暫定保管所にいつまで置かれるのかもわかりません。 もし地下から取り出すことが技術的にできなかった場合、暫定保管所には新たな核廃棄物が持ち込まれるのではないかとの懸念もあり、住民はカンカンに怒っています。 また、核廃棄物を入れて埋めてある容器はすでに腐食し、岩塩と一体化しているものもあります。そのため、政府は処分場の岩塩を広範囲に粉砕しながら取り出す研究を進めているところですが、やるにしても膨大な費用がかかる。保管まで含めると45億ユーロ(約7800億円)が見込まれています。原資はもちろん税金です」 実際に処分場の中へ入ったことのある田口氏によると、ヒヤリとした巨大な空間で、水がポタポタ垂れて溶けた岩塩が固まっているところもあった。核廃棄物のあるエリアはコンクリートで塞いである上に不安定な地盤のため、取り出すのも大変だろうと感じたと語る。 知らないうちに核のゴミ捨て場にされてしまった地域住民にとっては、迷惑もいいところだ。政府との交渉を続ける市民グループに参加する住民のパウル・コッホ氏はこう怒る。 「取り出した核廃棄物を地上に保管すること自体が、理に適っていません。そもそもアッセに貯蔵されている核廃棄物は、ドイツ全土から排出されたもの。それを『一地域』の問題に矮小化して押し付けられるなど、明らかにおかしいことが起きています。 私たちは国の手続きの違法性を問う裁判ですでに勝訴しており、今後も粘り強く交渉を続けていきます」 核廃棄物の処分は、かくもさまざまな問題を引き起こす。そしてこれは、日本にとっても対岸の火事ではない。 現在、日本国内の原発から発生した使用済み燃料の総量は、全国に約1万7000トン。世界では原発から出た核のゴミは、そのまま最終処分場へと送られるケースが多いが、日本は「核燃料サイクル」を掲げている。廃棄物を一度再処理工場に送り、取り出したウランとプルトニウムを再び原発で使える核燃料に加工して利用する必要があるのだ。 原発マネーで分断される住民たち だが、現実的には核のゴミの再処理を行うことは難しい。実際、青森県六ヶ所村の再処理工場の稼働はすでに30年近く遅れている。 結果、使用済み燃料は行き場を失いパンク寸前だ。福井県の大飯原発では貯蔵容量の9割に達し、全国の原発でも平均8割に迫る。再処理工場が稼働したとしても、処理済みの核燃料が使えるプルサーマル基は全国にわずか4基しかない上、核燃料サイクルを行う本来の目的だった高速増殖炉が実現する可能性はほとんどない。 核のゴミの問題を無視したまま再稼働へと突き進む日本の現状について、原子力委員会で委員長代理を務めた鈴木達治郎氏はこう話す。 「使用済み燃料の取り扱いの行き詰まりを打開するためには、再処理せずにゴミとして地層処分できるよう法律を改正することです。使用済み燃料を直接処分しても大丈夫なことは、世界中で合意があり、日本でも可能とされました。再処理をしないと捨てられないという今の政策は合理的ではありません」 まだ問題はある。再処理の過程で生じた極めて危険な廃液を捨てる「最終処分場」をどこにするか、ということだ。 国は自治体からの手挙げ方式を採用し、現在のところ北海道寿都町、神恵内村、佐賀県玄海町で調査が進む。だが、初期ステップの「文献調査」だけで最大20億円の交付金が入ることもあり、十分な合意形成がないまま自治体トップが手を挙げてしまい、住民間で分断が生じている。 鈴木氏が続ける。 「手挙げ方式だと、交付金目当てとの批判や住民間の対立が露見するなどの問題が発生し、責任も自治体に行きがちです。国が科学的根拠に基づき、適地を絞り込んだ上で、国の責任のもと、自治体に申し込む方式に変えるべきではないでしょうか」 原発を動かせば核廃棄物は必ず生まれるが、捨て場所がないままここまで来てしまった。そのしわ寄せを受けて翻弄されるのは、いつも弱い立場の住民だ。 |
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KEY_WORD:最終処分場_:OOI_:ROKKA_:寿都町_調査応募検討_:神恵内村_文献調査_: | ![]() |
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