[2025_08_22_02]風車25基で最大出力22万kW、国内最大の洋上風力が動き出す ウィンドパワー最前線 (中)(ニュースイッチ2025年8月22日)
 
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風車25基で最大出力22万kW、国内最大の洋上風力が動き出す ウィンドパワー最前線 (中)

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 北九州響灘洋上ウインドファーム 地域と発展する洋上風力に

 九州最北部・北九州市沖の響灘で槌(つち)音が響く。洋上風力発電設備「北九州響灘洋上ウインドファーム」の建設工事だ。2025年度中の運転開始に向け、工事は佳境を迎えた。風車25基で最大出力22万キロワットを生む稼働時点で国内最大の洋上風力が動き出す。
 北九州市による海域利用の公募に応じた事業で、市は風力発電産業の総合拠点化も目指してきた。事業主体の、ひびきウインドエナジー(北九州市若松区)の笠原覚取締役建設所長は「地域と歩む洋上風力にしたい」と意気込む。九州電力グループ、電源開発(Jパワー)などが出資。地場資本が5割入る。

 総事業費は約1700億円。若松区沖合の南北10キロメートル・東西11キロメートルに広がる海域面積約2700万平方メートルに風力発電設備を建てる。約5億キロワット時の年間発電量を想定し、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)で20年間売電する。
 8月上旬で20基ほどの風車の据え付けを終えた。10月に向けて風車の据え付けを完了させる。基礎部はすべて設置済みで、黄色に塗られたトラス状の基礎上部だけが洋上に顔を出す場所もある。
 海底地盤の調査を踏まえて杭式ジャケットと呼ぶ形式を採用した。直径2メートル前後の複数の基礎杭を打設し、上部にジャケットを据え付ける。全体で基礎杭144本を用い、打設は地盤に応じて3工法を使い分けた。「複雑な地盤と地質、水深への対応はチャレンジングだった」と笠原取締役は苦労を振り返る。

 風車1基に1本の太い基礎鋼管杭を用いるモノパイル式に対し、ジャケット式は多くの鋼材を必要とするなどコストも割高になる。
 他方、それを支えたのが北九州という“モノづくりの街”の存在だ。ジャケットは設置海域の臨海部にある日鉄エンジニアリング若松工場(同)で最終的に組み立てた。現場に直送できるためリードタイムはゼロに近い。
 風車の設置では、こちらも近隣の「基地港湾」が活躍する。国と自治体が埠頭(ふとう)の岸壁や用地を長期に貸し出す施設で、九州では唯一となる。
 部材の受け入れや仮組み立て、自己昇降式作業台船(SEP船)への積み込みを基地港湾で実施する。部品を積み、短ければ半日で据え付けを完了できる。「陸上主要拠点やモノづくりへの近さはアドバンテージになった」(笠原取締役)。

 建設にあたっては、地の利が大きな追い風になった形だ。運転開始後はメンテナンスを含めて“地域の利”を生めるかが試される。
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