![]() |
![]() |
[2025_08_27_09]試論「廃原発事始め」 藤岡彰弘(廃原発watchers 能登・富山)(たんぽぽ2025年8月27日) | ![]() |
![]() |
参照元
04:00 試論「廃原発事始め」第1回 「はじめに」 「存」原発に正面から対峙する「廃」原発を掲げたい! 再エネへの転換を主張するだけでよいのか ◎私もそうですが、これまで多くの人々が、すべての原発をなくそうと「脱原発」を掲げ、再生可能エネルギー(以下再エネと略す)を中心にした社会の形成を求めてきました。その方向性に間違いはなかったと思います。 一方、電力会社や国は、原発と再エネとを共存させることを前面に押し出しながら、原発再稼働を推し進め、長期停止中の原発を保持し続けようと画策し続けてきました。こういった推進側のありようは言わば「存原発」だといえます。ここにきて推進側の「存原発」攻勢が一層激しくなってきました。 ◎そういったなかで、私は、原発に反対する側の主張が、再エネへの転換を求めることだけに留まっていては、相手の「存原発策」=再エネとの共存策にきちんと対抗できないのではないかと思い始めています。 ◎原発全廃社会のイメージが持てない二つの理由 なぜ、再エネへの転換を求めるだけでは力にならないのか?私が思う理由は二つです。 一つは、電力供給への漠然とした不安から、人々の中に原発全廃へのためらいが残り続けていることです。 再エネの供給には不安定さがあると思い、再エネを中心にした社会形成へのイメージをはっきり描けないままでいるからです。そのため、原発と再エネの「共存策」の方がより現実的であり、多少の原発再稼働は認めるべきではないかとなるのです。 二つ目は原発全廃を主張する私たちの側が、電力資本と国が原発に固執する理由を、きちんと指摘し説明しきれていないことだと思います。これまでの私たちの「脱原発」を訴えるありようの多くは、「こんな危険な原発をなぜ推進するのでしょうか?」といった疑問形に留まったままになってはいなかったでしょうか? ◎推進側が原発に固執する3つの根拠 偉そうなことは言えませんが、私は推進側が原発に固執する理由は、三つあると思います。 一つは電力供給にかかわること。 二つ目は原発をめぐるお金の問題。 三番目はアメリカとの「核同盟」に関わることです。次回からはこれらについて順次書き述べていきたいと思います。 ◎「存原発」に正面から対峙する「廃原発」を掲げたい いずれにせよ、推進側が、原発を存続させることに固執し続ける「存原発」なら、原発全廃を掲げる私たちの主張は、「廃原発」こそふさわしいのではないかと思うのです。 残念ながら、「廃原発論」をとうとうと論じることはできませんが、はじめに推進側の根拠を露わにし、次に「廃原発」への手がかりになると思ういくつかの歴史的事件を紹介し、最後に「廃原発」へのいわば「とば口」になりうると思うことについて触れ、これらを「廃原発事始め」と題して順に書いていきたいと思います。 未熟で独りよがりなものだとは思いますが、一つの試論としてお読み頂ければ幸いです。 試論「廃原発事始め」第2回 「存原発」の根拠−なぜ原発に固執するのか、固執できるのか? 電力会社にとって水力こそがベースロード電源だった イ.ベースロード電源をめぐって 再生可能エネルギーは不安定か 「原発はベースロード電源として電力供給に貢献している」という文言が、電力会社の常套句として用いられてきました。 このベースロードという言葉では、安定かつ大量に電気を作って送り出しているというイメージが強調されています。 その反対に、再生可能エネルギー(以下、再エネと略)は天候や季節によって左右され、不安定でチマチマした電力で安定した電力供給を担えるようなものではない、と対比されてきたのです。 しかし、この半ば常識であるかのように受け止められている言説は、全く事実ではありません。 ・ポイントは既存の水力発電にあり というのは、この再エネ=不安定電源とする際の、再エネをイメージするものの中に既存の水力発電が含まれていないからです。 黒四ダムに代表されるような水力発電所も、間違いなく再生可能エネルギーです。 再エネ全体の3割強を占める水力発電は、年間を通してほぼ安定して電力を供給し続けています。その存在がなぜ再エネのイメージの中から抜け落ちてしまうのでしょう。 電力会社もそのことを忘れていたのでしょうか。まさか、そんなことはありえません。 ・電力会社にとっての水力発電=再エネ 電力会社にとって、水力発電は特別大きな意味をもっています。9電力会社とも、水力発電がメインの発電源だった歴史を持つからです。 ずっと水力こそがベースロード電源だったのです。 電力各社の社史には、それこそ必死になって他社と競合しながら水力中心の発送電体制を拡大・拡充してきた経緯がつづられています。 それを思えば、再エネは不安定で取るに足りない、などといえたものではないはずなのです。 ・ベースロードを基礎に置いた発送電システム 電力各社は、例えば関西電力は黒部川の、東京電力は信濃川や阿武隈川の巨大ダムで取水して発電し、関西圏や首都圏に今も電気を送り続けています。 それが水力発電中心のベースロードでした。 1970年代からは、それを延長し、途中にいくつもの変電所を建設し、送電容量もどんどん増大させて火力発電所と原子力発電所が建設されていきました。 この長大な高圧送電線網は、いうなれば電気の高速道路網です。これに小規模の再エネ電力を接続するためには、新たな変電設備と送電線の敷設が必要となります。 電力会社の本音は、出来上がってしまっている高圧送電線網にチマチマした電源を接続する手間などかけたくない、繋いでほしければ高額の託送料を払え、ということだったのでしょう。 しかし、増え続ける小水力をはじめとする再エネの小電力会社は、今や発送電会社のお得意さんです。 それでも原発が廃炉になれば、ベースロード全体にとって大きな損失となってしまう。 電力各社にとって、原発という存在抜きの高圧送電線網は、もはや考えられもしないのです。 試論「廃原発事始め」 第3回 ロ.再エネと原発の「共存」?! 送配電網の地域独占は続く 2020年に発送電分離が行われ、形式的には旧来の電力会社に対して、再生可能エネルギー(以下、再エネと略)だけで発電を行う市民電力等が対抗していけるようになりました。 ところが、新しい送配電会社になっても地域独占的な送配電網が維持されているため、再エネと原発は全く競合することなく同じ送配電網の中に「共存」する状態です。 これではなんのことはない、市民電力などが支払う既存の送配電網に接続するための託送料(私たちも電気料金を通して支払っている)によって送配電網は整備拡充され、結果的に原発存続を後押しするような恰好になってしまっているのです。 ・電力資本側の取り組み 二つの方法 それだけでなく、電力資本側の再エネへの取り組みもどんどん増えてきています。いわば積極的な「共存策」です。意外に思われるかもしれませんが、大電力各社は決して再エネをおろそかにしてはいません。目立つのは、以下の二つの方法です。 一つは自社の水力発電量を着実に増やしていく方法。 既存の水力発電所のタービンなど主要部品を交換して、出力を大幅にアップさせたり、新規の発電所建設を進めたりしています。 北陸電力の場合は、2030年代早期に、水力による発電出力を2018年度に対して100万kw増やすという目標を掲げています。 もう一つの方法は、PPAと呼ばれ、企業の工場等の屋根を借りて太陽光発電を増やしていくやり方です。 企業などがオーナーとなり、北陸電力など電力会社はその資本力とノウハウを生かして、工場の屋根に太陽光パネルを設置し、既設の送配電網に接続していくというものです。 北陸電力は、2030年度までの12年間で1000メガワット分の契約獲得を目指しているといいます。 二つの方法に共通するのは、どちらも託送料ゼロか、ほとんど支払わなくていいということです。つまり再エネをめぐっての競争は、高額の託送料を支払う市民電力に対し電力資本側が圧倒的に有利であり、それを背景に原発と再エネの「共存」が図られているのです。 ・電力資本が原発に固執し続けられる理由 もう一度まとめると、大電力各社が原発にこだわる理由の一つは、原発が基幹電力送電線(ベースロード)の起点であり、原発の廃止は最大資産である送配電網ネットワークの存在意義に直接関わってくるからです。 そして大電力各社が、原発を保持できているのは、再エネとの「共存策」によって収益をあげ、同時に大電力会社のイメージアップを図り続けているからでもあるといえます。 それでも、原発を保持し続けるためには相当の資金が必要ですが。次回からはその資金の出所についてふれていきたいと思います。 ハ.安心・安全・安定した資金調達の仕組み カネ喰い虫としての原発 こんなにお金をかけて原発を再稼働して採算が合うのだろうか?と不思議に思う人は多いのではないでしょうか。 原発はテロ対策施設などの付帯設備を含めると、その建設費は現在では1基1兆円といわれています。維持費も年々100億円以上がかかるうえ、いわゆる安全対策として、堤防のかさ上げや港湾施設に経費がかかれば、さらに何千億円という単位の資金が必要になります。 まさにカネ食い虫です。そんなお金を一体どうやって用意するのか? どういう仕組みでこんなことが可能になるのか? 専門的知識など持ち合わせていませんが、私なりに考えてみました。 間違っていたらご指摘ください。 ・電力社債という打出の小槌 2020年、電力会社の、発電、送配電、小売りへの法的分離が完了しました。 これまで電力会社には、総括原価方式という、かかった経費をいくらでも電気料金で賄うことができる会計処理が認められていました。 また、たとえ株価が大きく下落しても設備資金を確保しやすくするために、「一般担保付社債」という他の社債等に対して大きく優先する、特別な電力社債の発行も認められてきたのです。 「安全・安心」ということばは、まるでこの電力債を売り込むためのもののようでした。 証券会社を通して、投資家のみならず幅広い法人、個人が電力社債を購入してきたのです。 電力各社は何百億円という社債を毎年発行して、原発を増やし、保持し続けるための資金を苦も無く手にすることができたのです。 そしてこの特別扱いは、法的分離に伴って廃止されるはずでした。 ところが、政府は廃止までに5年間の移行期間を設定。 その間に東京電力HDなど各持ち株会社が電力社債を引き続き発行することを認めたのです。 そのため電力社債の発行が急増。各社の24年度発行額合計は1兆4800億円にものぼりました。 移行期間の終了は2025年5月。 それまでに集めたお金が各社の原発再稼働のための資金となり、保持し続けるための頼みの綱となってきたのです。 ・電力市場システムの改変とその背景 この5年間に政府は次々と電力市場システムを改変してきました。 次回でその中身をお伝えしたいと思います。 名目としては、「再生可能エネルギーへの移行と進展」をうたっていますが、その実態は、既存の大電力会社の市場での地位を優位に保ち、原発と大型ガス火力を保持させていくよう仕向けていくものでした。 ただここで押さえておきたいのは、このような動きは日本だけでなく、欧米などでも、原発を巻き返そうとする金融資本勢力によってもほぼ同様な仕組みが作り出され、そのお先棒をIAEA(国際原子力機関)が担ぎ続けているということです。 この6月には、世界銀行が途上国の原発事業への資金提供を再開すると伝えられました。 国際的なファンドが原発再稼働の陰でうごめいているのです。 ニ.電力市場システムの改変は続く 容量市場の導入 2016年以降本格化した電力自由化・発送電分離によって、電力市場には再エネの電力が一気に増え、価格競争による市場価格の大幅な下落が予想されました。 それでは電力社債を使って資金調達を行ってきた電力各社は、その返済にあてていた電気料金が下がってしまい苦境に落ちかねません。 そういう事態を避けるため、政府は電力広域的運営推進機関(OCCTO)を通して、2020年に電力容量市場を開設しました。 この市場には変動電源とされる太陽光や風力は初めから除外され、最低入札容量も千kw以上のため、小規模電力会社は入札もできません。 それなのに稼働していない原発まで含めた発電可能容量をもとにして既存の電力会社は入札できるのです。 この制度では、落札しても実際に電気が買えるのは4年後、売るにも買うにも長期予測が立てられる大電力会社が圧倒的に有利な仕組みになっています。 だから大電力会社は、この市場で電気を安く買い取り、消費者が支払う高い電気料金を、原発再稼働に向けて設備投資した資金の返済に充てることができるのです。 ・長期脱炭素電源オークション 政府はこの容量市場に追加して、2023年に長期脱炭素電源オークションを開設しました。 再エネ電源が阻害されているとの批判をかわし、新規の電源開発を進めることを目標としましたが、2023年第1回オークションの結果は、LNG火力が576万kw、原発(中国電力島根3号)132万kw、蓄電池109万kw、アンモニア混焼石炭火力77万kw等でした。 翌2024年度は、既設原発の安全対策投資が追加され、日本原電東海第二、北海道電力泊3号、東京電力柏崎6号と、全脱炭素電源枠の6割以上を占めた原発関連ばかりが目立つ結果となりました。 落札会社は、その分の電力を、発電が開始された時点から全量市場に提供することを条件に、原則20年間、再稼働に向けた設備投資のための資金提供を受けられることになっています。 この落札会社に支払われる原資こそ、私たちが支払う毎月の電気料金なのです。 ・新たな債券(ボンド)も次々と こういった市場改革に並行するようにして、欧米などでは温暖化ガス排出削減のための資金獲得を目的とした様々な債券が発行されはじめました。 その代表格がトランジションボンド(移行債と訳されます)です。 日本政府は2021年に発行条件等の指針を公表、2024年以降電力各社は次々とこのトランジションボンドを発行し、九州電力、関西電力、北海道電力3社の合計額は1350億円にまで達しました。 このトランジションボンドよりさらに好条件で資金調達が可能とされている、グリーンボンドやサステナビリティボンド、ソーシャルボンドといった様々な債券があり、電力各社はこれらの新しい債権発行への画策を始めています。 (第6回に続く) |
![]() |
![]() |
KEY_WORD:廃原発_:再生エネルギー_:廃炉_: | ![]() |
![]() |