[2019_11_29_03]稲田朋美、世耕元経産相もカネを…まだ「関電疑惑」は終わっていない(現代ビジネス2019年11月29日)
 
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稲田朋美、世耕元経産相もカネを…まだ「関電疑惑」は終わっていない

責任追及を免れた稲田氏

 《浜岡原子力発電所(中部電力)については、他の原子力発電所と扱いを異にし、全面停止を求め、再稼働要請も対象外としているが(中略)、他の原子力発電所と同じ安全基準が満たされているにもかかわらず、浜岡原子力発電所だけ特別扱いする根拠を明らかにされたい》
 《関西電力株式会社大飯原子力発電所、同高浜原子力発電所、同美浜原子力発電所、日本原子力発電株式会社敦賀原子力発電所、独立行政法人日本原子力開発機構原子炉廃止措置開発センター(ふげん)、同高速増殖原型炉「もんじゅ」(以下「もんじゅ」という。)においてシビアアクシデントが生じた場合、これらの原子力発電所所在地周辺において、それぞれ具体的にはどのような被害や影響が生じると想定しているのか、明らかにされたい》
 これらの文書は、2011年3月に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故を契機に厳格化された原発の安全審査のありかたや、再稼働の基準について緩和を求めるべく、政府に提出された質問主意書からの抜粋だ。
 前者は2011年7月4日に提出された「原子力発電所の安全基準に関する質問主意書」、後者は同年7月28日に日提出された「原子力発電所の安全基準に関する再質問主意書」に記載されたものである。提出したのは、自民党の稲田朋美幹事長代行だ。
 稲田氏は、2016年2月の参院予算委員会で、こんな発言もしている。
 《先週、福井県の高浜原発が再稼働いたしました。福井県は国策である原子力政策を長年にわたり担ってきたわけでありますが、そうした地元にとって、国家のエネルギー政策が長期的な視点から国民的なコンセンサスの中で行われるということが重要だと感じております》
 そして、安倍晋三首相に対して、こう迫った。
 《総理は、原子力政策全般についての考え方を昨年12月の原子力防災会議において述べられたと承知いたしておりますが、改めて、国民に対し、原発への理解をどのように求めていかれるのか、御説明お願いいたします》
 このとき安倍首相は「エネルギー供給の安定性を確保するためには、原子力はどうしても欠かせないエネルギーであります」と迎合する答弁をしたのだった。
 こうした稲田氏の原発に対する姿勢に、非難の声が上がっている。それというのも、この9月に関西電力の「原発マネー」にまつわる汚職問題が持ち上がり、稲田氏にも「原発マネー」が渡っていたことが明らかになりながら、一向に責任追及がなされなかったからだ。

資金管理団体「ともみ組」にも…

 「汚職のキーマンである福井県高浜町の故・森山栄治元助役と深く関係していただけではない。これに加えて、関西電力をはじめ、各電力会社などからひそかにパーティー券を買ってもらったりもしていた。昨年、そのことも明らかになっている」
 政府関係者は、そう語った。
 稲田氏が代表を務める自民党福井県第一選挙区支部は、森山氏が筆頭株主であり、取締役をも務めていた警備会社「オーイング」から2011年、2012年に36万円を、また関連会社の「アイビックス」からも2011年、2012年に12万円の献金を受けていた。
 ちなみに「アイビックス」の吉田敏貢会長は稲田氏の後援会長を務めたうえに、2011年には50万円を個人献金もしている。
 また、2018年秋に公開された稲田氏の資金管理団体「ともみ組」の政治資金収支報告書からは、意外な事実が明らかになった。銀行や生保、交通・航空会社や不動産、商社、大手メーカーなど日本を代表する錚々たる企業に加えて、日本全国の電力会社が稲田氏のパーティー券を購入していたのである。
 北海道電力、東北電力、北陸電力、中部電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力。これに加えて、福井県敦賀市に原発をおく日本原子力発電や電気事業連合会、関西電力関係企業も購入しており、合計すると112万円にも及んでいた。
稲田朋美、世耕元経産相もカネを…まだ「関電疑惑」は終わっていない

世耕元経産相にも疑惑が

 政府関係者が、背景事情を説明する。
 「本来であれば、明示されるはずのなかったパーティー券の購入者がわかってしまった。というのも、当該のパーティーが中止され、返金の必要が生じたためで、報告書には返金対象者の名前を載せざるを得なかったからだ。もし中止されずにそのまま開催されていたら、購入者はいずれも20万円以下で公開対象とならなかったので、明るみには出なかっただろう」
 今回の騒動を注視していた検察関係者は、こう指弾した。
 「国会議員が民間企業の要請を受けて便宜を図り、その見返りに金銭を受け取る──まさに『あっせん利得処罰法』に抵触するような行為だ」
 しかし、同様の行為は稲田氏に限ったことではない。世耕弘成参院幹事長も原発再稼働を懸命に働きかけていた。世耕氏は2016年8月から2019年9月まで、原発政策を所管する経済産業省の大臣を務めている。
 《エネルギー・原子力政策に責任を有する経済産業大臣として、このような取組全体を通じて、原子力に対する社会の信頼が回復するよう、先頭に立って最善を尽くしてまいります。今般の玄海原子力発電所3・4号炉の再稼働を進める政府の方針について、ご理解を賜るようお願い申し上げます》
 これは、2017年1月に世耕氏が佐賀県知事宛に送った要請文からの抜粋だ。翌2018年1月には、東京電力の柏崎刈羽原発の再稼働を促す同様の文書を新潟県知事にも送っている。

「桜を見る会」に隠れたが

 「原発視察などのパフォーマンスもすごい」
 前出の政府関係者が指摘した。
 2017年7月、世耕氏は再稼働した関西電力高浜原発3、4号機を視察。さらに2019年4月には、運転開始から40年を超え、延長運転を目指して安全対策工事を進めている関西電力美浜原発3号機に足を運んだうえ、「再稼働には地元の皆さんの理解が極めて重要で、丁寧に取り組む」とアピールまでしているのである。
 さて、この世耕氏。やはり多額の「原発マネー」を受け取っていた。
 関西電力のキーマンであった森山氏が相談役を務めた原発のメンテナンス会社「柳田産業」の社長から、2012〜15年にかけて計600万円の献金を受けていた。
 「経済産業相になる前とはいえ、献金を受けた後、職務権限を濫用するような行為に至っているだけにさらに悪質だ。外形的には『あっせん収賄罪』が疑われると言える」(前出の検察関係者)
 だが、検察が捜査に動き気配は微塵もないどころか、国会でもいまだ触れられていない。閣僚の相次ぐ辞任や、安倍首相自身の「桜を見る会」をめぐる疑惑に隠れて、安倍首相の「秘蔵っ子」ふたりの疑惑には、このまま幕が引かれてしまうのだろうか──。

時任兼作

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