[2022_10_01_01]暴走する原子力行政 岸田政権の原発再稼働を止めさせよう 再び重大事故を準備する原子力ムラ (上)(2回の連載) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2022年10月1日)
 
参照元
暴走する原子力行政 岸田政権の原発再稼働を止めさせよう 再び重大事故を準備する原子力ムラ (上)(2回の連載) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 項目紹介
 1.エネルギー基本計画すら放棄する岸田政権の原発政策
 2.東日本大震災以降、新規立地原発の審査は行われたことがない
 3.あいまい戦略と無責任さと
   以下、(下)に掲載
 4.岸田政権の原発回帰と再稼働
 5.例外だった延長運転も促進(最長80年運転も認める)

1.エネルギー基本計画すら放棄する岸田政権の原発政策

 2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画(以下、エネ基)では、再生可能エネルギーを主力電源として、2030年度までに21%とする一方、原発を20から22%程度とし、合わせて非化石電源比率44%を目指すとされた。
 他の電源を含む構成比は火力発電41%(LNG20%、石炭19%、石油など2%)、再生可能エネルギー36〜38%、原発20〜22%、水素やアンモニア発電1%とされている。
 政府は「原発再稼働は進めるけれども、原子力依存度はできる限り低減していく」という基本方針を、このエネ基でも踏襲している。
 この方針は繰り返し表明され、この下でエネルギー基本計画が第4次、第5次、第6次と改定されてきた。
 ところが、今回の岸田政権による「再稼働」推進と「新規原発の開発」
は、如何に考えてもこの方針を放棄するものとしか思えない。
 それでも岸田首相は会見で「原子力の依存度は低減させる」としている。
 「新増設」にまで踏み込むのであれば、これはエネ基の変更である。
 基本計画の策定からやり直すべきであり、位置づけのはっきりしない「グリーン・トランスフォーメーション(GX)実行会議」などで決められることではない。

2.東日本大震災以降、新規立地原発の審査は行われたことがない

 2011年3月の東日本大震災時点で稼働中だった原発は54基、合計出力4896万kWだが、震災後に安全性の確認が必要として順次、定期検査に入る段階で停止した。(最後に北海道の泊3号機が2012年7月停止)
 ただし中部電力浜岡原発だけは南海トラフ地震の震源域にあるため津波の襲来に耐えられない恐れがあるとして、当時の民主党、菅直人首相の要請で2011年5月に早期停止した。
 その後は東電福島第一原発事故を踏まえて、想定を超える地震や津波に何処まで耐えられるかを検証する「ストレステスト」を経て再稼働した大飯原発(2012年7月)の例があるものの、ほとんどは原子炉等規制法の改正(2013年7月)により原子力安全委員会を廃止し、独立した規制組織として誕生した「原子力規制委員会」(2012年9月)の審査により、「新規制基準の適合」審査を経なければ再稼働は出来なくなった。
 既存の原発の再稼働は順次進められているものの、リプレースを含む新増設は検討されていない。
 法令上は新増設禁止の規定はない。審査を経て基準を満たしているとされれば、建設可能だと考えられる。
 しかし原子力委員会と原子力安全委員会による立地審査と安全審査の時代から、規制委員会の新規制基準適合性審査に変わってから、新規立地原発の審査は行われたことがない。

3.あいまい戦略と無責任さと

 福島第一原発事故前に電力会社から国に出ていた「供給計画」では、新増設が予定されていて着工していないものは8原発11基あったが、そのうち5原発7基では、まだ計画が維持されているという。
 取り下げられていたのは、いずれも福島県内の福島第一原発7・8号機(ABWR135万kW2基)と東北電力の浪江・小高原発(BWR82.5万kW)の3基。
 理屈の上では、震災前に実施されていた立地のための安全審査は、継続することが可能かも知れないが、いまさら古い設計の沸騰水型軽水炉や加圧水型軽水炉を、そのまま作るなど考えられない。これらは白紙にせざるを得ないだろう。
 新型の安全性の高い原発があるかと言えば、欧州のEPR(欧州加圧水型炉)は二重格納容器やコアキャッチャーを備えているが、フランスのアレバ社製。国産では造れない。
 SMR(小型モジュール原子炉)という、安全性に配慮した原発を研究開発しているメーカーはあるが、実用炉は何処にもないので、審査する対象にもならない。
 つまり、新増設といっても何を、何処に、どうやって、誰が建てるかも検討されていない。(下)に続く
   (初出:2022年9月発行.月刊「たんぽぽニュース」No321)
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