[2018_02_10_02]審査前進狙い窮余の策 対象断層11本 東通原発再稼働なお不透明(デーリー東北2018年2月10日)
 
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審査前進狙い窮余の策 対象断層11本 東通原発再稼働なお不透明

 東通原発(青森県東通村)の非常用冷却水を取り込む重要施設「取水口」の直下で確認されている「m―a断層」を巡っては、一貫して活動性を否定する東北電力に対し、原子力規制委員会がかねて疑念の目を向けてきた。
 取水設備の新設という窮余の策を表明し、停滞する審査の前進をうかがう東北電。しかし、活動性評価が未決着の敷地内断層が審査の俎上(そじょう)に数多く載せられている構図は変わらず、東北電が安全対策工事完了後の2019年度以降を目指す再稼働には不透明感が付きまとう。
 断層が活断層かどうかの判断は、周辺に分布する約12万〜13万年前以降の地層で、変形やずれの有無を調べるのが審査の主流だ。
 一方、m―a断層で確認できる地層は最も近い年代でも約10万年前。規制委が昨年11月に実施した現地調査は東北電にとって、断層面の粘土鉱物の形成年代といった別の証拠を直接示せる絶好の機会だったが、くしくも規制委が自身の疑念を確信に近づけていた。
 もっとも、その調査以前から「取水口の付け替えが必要になるかもしれない」と分の悪さを認める東北電幹部もいた。
 青森県庁で9日に記者会見した東北電土木建築部の鈴木一広部長は「2万、3万年のギャップを埋めるデータがない。現実的な路線を選択した」と述べ、取水設備の新設によって審査のハードルを下げる狙いがあったと説明した。
 「(東北電は)規制委に負けた。そして審査を一歩前に進めた」。ある地元関係者は一連の動向をこう解説する。
 14年6月に東北電が東通原発の審査を規制委に申請してから、既に3年8カ月が経過。“前哨戦”に当たる、規制委の有識者調査団による議論までさかのぼると、断層関連だけで実に5年余りの歳月を費やしている。
 ただ、審査対象の断層は計11本に上り、m―aに関しても活動性評価そのものが解決したわけではない。重大事故対策など地震・津波以外の審査もほとんど進んでいないため、再稼働目標までの残り時間は依然として十分とは言えず、東北電にはいばらの道と言えそうだ。

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