[2022_05_03_01]本県核燃税収 全国突出 20年度192億円 2位福井の2倍超 サイクル立地で 避難道や産業整備に活用 青森中央学院大・山谷清秀講師(行政学)の話 使途に地域振興 反発も(東奥日報2022年5月3日)
 
 原子力施設が立地する12道県が事業者に課す核燃税で、2020年度の税収(決算ベース)を比較すると、本県が192億6千万円と全国最多だったことが各自治体への取材で分かった。2位の福井県91億6千万円の2倍超で、約100億円多かった。20年度までの累計額も本県が3180億円と突出している。本県の税務課は「原子力施設が複数あり、(施設立地に伴う安全対策などの)財政需要が大きいため」と税収が多い理由を説明する。       (加藤景子)

 12道県は、原発の原子炉に挿入する核燃料の価格や原発の出力などに応じ、それぞれ条例を制定して法定外普通税を課している。福島県は11年の東京電力福島第1原発事故後、条例を更新せずに廃止した。
 本県の核燃税収入は01年度に100億円、17年度に200億円を突破し、近年は200億円前後で推移している。20年度の県税全体における割合は13%で「重要な安定財源」(県幹部)となっている。
 12道県の20年度税収は合計442億円。本県はその4割超を占め、累計額も核燃税の創設が遅い「後発」組であるにもかかわらず、全国で初めて核燃税を導入した福井県の2300億円を大きく上回った。
 本県の税収額が突出しているのは、六ケ所村に核燃料サイクル施設が集中立地しているのに加え、全国の原発から運び込まれ六ヶ所再処理工場で貯蔵されている使用済み核燃料の税率が特例措置で引き上げられていることが背景にあるとみられる。
 原発を抱える各道県は、核燃料の価格に対して当初課税したが、福島原発事故により原発が停止に追い込まれ、稼働率も低迷。そこで運転状況に関係なく安定的に税収を得られるよう、出力に応じて、課税する出力割も併用した。福井県、島根県などは廃炉となる原発にも課税している。
 近年は原発のプールに保管されている使用済み核燃料への課税も目立つ。事業者に燃料の県外搬出を求める福井県は16年度に「搬出促進割」を導入。5年以上貯蔵された燃料に重量1キロ当たり年間1500円を課している。
 県と立地町が同時に使用済み核燃料に課税する事例も。愛媛県と伊方町、佐賀県と玄海町で、税率はそれぞれ1キロ当たり500円。愛媛県は「伊方町と調整し、財政需要の県費負担分、町分を考慮して導入した」、佐賀県は「先に検討を始めていた玄海町が独自で課税したい意向だったため、県も別に課税することとした。税率は先行する自治体の税率などを参考にしながら事業者と協議した」と述ベた。

 避難道や産業整備に活用

 本県の核燃料物質等取扱税(核燃税)は1991年に創設された。日本原燃・ウラン濃縮工場(六ヶ所村)でつくられる製品ウラン、六ヶ所再処理工場(同村)に受け入れ、貯蔵する使用済み核燃料、東北電力東通原発(東通村)の原子炉に挿入する核燃料などが課税対象。県は5年を1期としてその都度税率を見直し、条例を更新している。
 2019〜23年度を期間とする今期の税収見込みは計約976億円税収額算定の根拠となる財政需要としては、避難道などの道路整備、立地周辺地域の農林水産業の基盤整備をはじめとした産業活性化、環境放射線の測定、広報などがある。
 県は今期の更新の際、核燃料サイクルについては3施設の税率を下げる一方、六ヶ所再処理工場に貯蔵する使用済み核燃料の税率はもともと1キロ当たり1300円を6倍超の8300円に引き上げる特例措置を継続した。
 この特例措置は10年、同工場の完工遅れによる税収減を補うためとして導入された。同工場のプールには現在までに満杯に近いおよそ3千トンの使用済み核燃料が搬入されており、貯蔵に関する税収は重要な部分を占めているとみられる。「当分の間」としている特例措置の期問は「現時点で期限は決まっていない」(県税務課)という。
     (加藤景子)

 使途に地域振興 反発も

 青森中央学院大・山谷清秀講師(行政学)の話 核燃税は、電源3法交付金や固定資産税に金額が及ばないため注目されにくい。しかし本県の核燃税は、全体の県税収入に占める割合にをおいても、実際の金額においても、規模はかなり大きい。
 核燃税による収入は、元は電力消費者である市民や企業が支J払う電気料金に含まれている。原子力関連の収入がある種の「特権」と見なされるなら、電力消費者と立地・周辺地域との間でも対立が発生し得る。福島第1原発事故以降、運転を前提にしない課税が中心になってきたが、地域振興を目的とした使途もあり、いずれ電力消費者の反発を受け、見直しを迫られる時期が来るかもしれない。
 原子力関連の収入は自治体にとって重いものだ。最終処分場の文献調査が進む北海道寿都町、神恵内村、原子力関連・再生可能エネルギ一施設の誘致を検討する風間浦村は、いずれも人口減と雇用の問題があり、同時に公共施設の修繕・更新や災害復旧といった早急に解決すべき地域課題を抱えている。ただ、人口減や財政構造などはローカルな(地域の)問題ではなくナショナルな(国全体の)問題であるはずだ。自治体だけの問題として矮小化されるベきではない。

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