[2017_06_12_02]<茨城被ばく>甘い想定、被害を拡大 事故1週間(毎日新聞2017年6月12日)
 
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<茨城被ばく>甘い想定、被害を拡大 事故1週間

 ◇密閉作業せず。マスク半面
 日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センター(茨城県大洗町)で作業員5人が被ばくした事故は13日で発生から1週間となる。核燃料物質を扱うにもかかわらず、想定の甘い安全管理の実態が明らかになってきた。
 事故は6日午前11時15分ごろ、同センターの燃料研究棟で発生した。室内にいた作業員5人のうち、50代男性職員がプルトニウムやウランの酸化物の粉末が入ったステンレス容器を点検のため開封作業中、中のビニール袋が破裂し、粉末が飛散。5人が被ばくした。
 この作業は、密閉されていない「フード」と呼ばれる作業台で行われた。放射性物質が漏れ出さないよう周囲よりも圧力が低く保たれていたが、破裂の勢いで部屋に飛び散った。室内には密閉型の作業台「グローブボックス」もあるが、どちらを使うかの判断基準を明記した内規はなく、容器などに密封された核物質は現場判断でフードで扱うのが慣例化していたという。
 今回の粉末はポリエチレン容器に入れた後、二重のビニール袋で密封してからステンレス容器に入れて保管されていた。点検でステンレス容器は開けるが、ビニール袋は開けない予定だったため、「被ばくの危険はない」と判断していた。
 ただ、ステンレス容器は26年間、一度も中身を点検していなかった。原子力規制庁の幹部は「中身が密封されたままの保証はどこにあったのか」とフードを使った原子力機構の判断に疑問を示す。原子力機構の幹部も取材に「中のビニール袋が破裂するとは想定していなかった。フードで作業したのは不適切だったかもしれない」と想定の甘さを認めた。
 こうしたこともあり、作業員5人の装備も顔面全体を覆う全面マスクではなく、現場判断で鼻と口だけを覆う半面マスクの着用にとどまっていた。また、事故があった室内には監視カメラがあったが、映像は録画しておらず、事故時にカメラ映像を監視していた職員もいなかった。
 規制委の担当者は「そもそも重大事故が起きる認識がなかったのではないか」と指摘している。【鈴木理之、岡田英】

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