[2023_09_13_02]「3つの検証」報告書の内容 柏崎市長“総括できていない”(NHK2023年9月13日)
 
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「3つの検証」報告書の内容 柏崎市長“総括できていない”

 19時32分
 新潟県が東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働の議論の前提として取り組んできたいわゆる「3つの検証」の取りまとめの報告書では、それぞれの委員会の議論で出された論点や課題を整理した上で、対策などを指摘しています。
 今回の取りまとめの対象となったのは、東京電力福島第一原発の事故について、▽事故原因を検証した「技術委員会」、▽避難方法を検証した「避難委員会」、▽健康と生活への影響を検証した「健康・生活委員会」の3つの委員会で提出された4つの報告書です。
 取りまとめにあたる今回の総括報告書では、3つの委員会で取り上げた課題や教訓を整理した上で、関連性があるものについて、▽「情報伝達」、▽「住民への周知・普及啓発」、▽「安定ヨウ素剤」など大きく9つの項目ごとにまとめています。
 このうち「情報伝達」では、福島第一原発の事故直後、東京電力が原子炉の核燃料が溶け落ちるメルトダウンを認めなかったことから事故の重大性が社会に伝わらなかったことなどを取り上げ、情報伝達や発信にさまざまな問題があったと指摘しています。
 こうした問題について、検証した委員会は、▽不正確な情報発信などは隠蔽とも取られかねず、防護対策に支障をきたすので極力、迅速な情報発信に努めることや▽住民が求める情報の迅速かつ継続的な伝達体制を整備することなどを提言しています。
 こうした提言などを受け、県は総括報告書で、ソフト面の通報体制の整備や、災害の発生時でも通信網に支障が生じない体制の整備などが必要だと指摘しています。
 このようにそれぞれの項目では、事故の状況や委員会で出されていた課題を整理し、対策などを指摘する形でまとめられていて、こうした課題や指摘の間に矛盾やそごはなかったとしています。
 県は検証の取りまとめを今後の再稼働をめぐる議論の材料としていくとしていて、「県民に理解してもらう必要があるということで、わかりやすいものにするよう努めた」としています。

 新潟県がいわゆる「3つの検証」の取りまとめを終えたことについて柏崎市の桜井雅浩市長はコメントを発表し、この中で、「福島第一原子力発電所の事故の検証であるべきものが柏崎刈羽原子力発電所を巡る現施策の『検証』に変わってきている。異なる意見の両論併記などで終わるなど総括できていない」としています。
 その上で、「総括を巡る混乱も3つの検証に関する不審をさらに大きなものとし、極めて遺憾だった。総括をもとに早々に広範囲の意見を聴取し、その上で議会制民主主義における熟議と結論が導かれることを心より願う」としています。

 東京電力柏崎刈羽原子力発電所について、新潟県がいわゆる「3つの検証」を取りまとめたことについて、有識者委員会の委員長を務めた池内了名古屋大学名誉教授がオンラインで会見し、「福島第一原発の事故の教訓を柏崎刈羽原発にどういかすかが後回しになっていて、本当の検証ではない」と批判しました。
 柏崎刈羽原発の再稼働をめぐる議論の前提とされるいわゆる「3つの検証」については、当初、有識者でつくる「検証総括委員会」が取りまとめる予定でした。
 しかし、当時の池内委員長と県が運営方針などを巡り折り合いがつかずに取りまとめが行われない状況が続き委員全員の任期がことし3月で終了しました。
 このあと、県が有識者委員会に代わり、みずから検証結果を取りまとめることになり、方針が大きく変わりました。
 池内氏は13日、オンラインで会見を開き、公表された報告書について「福島第一原発事故の教訓を柏崎刈羽原発にどういかすかということを述べないと本当の検証にならないが、その部分が後回しになっている。柏崎刈羽原発の具体的な安全性に関する議論が避けられているのではないか」などと批判しました。
 その上で、「本来、私たちで科学的に検証するはずだったが県が行った検証では問題点の深堀りができていない」と述べ、今後、独自に原発事故が起きた場合の避難などを巡り、住民の意見を聞きながら検証作業を進める考えを示しました。
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