[2021_04_30_07]拙速に急ぎ、焦っていたのは、関西電力と国 「老朽原発(美浜3号機、高浜1・2号機)の稼働再開・延命について少なくとも拙速な議論・同意を避けてください」の請願書中で宣言した断食を解くにあたっての声明 (上) 中嶌哲演 石森修一郎〔若狭をかな(哀・愛)しむ会〕2021年4月28日(たんぽぽ舎2021年4月30日)
 
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拙速に急ぎ、焦っていたのは、関西電力と国 「老朽原発(美浜3号機、高浜1・2号機)の稼働再開・延命について少なくとも拙速な議論・同意を避けてください」の請願書中で宣言した断食を解くにあたっての声明 (上) 中嶌哲演 石森修一郎〔若狭をかな(哀・愛)しむ会〕2021年4月28日

項目紹介
◎悲しみと強い抗議の意思をこめて
◎拙速に急ぎ、焦っていたのは、関西電力と国
◎福井県の原子力3原則に照らして
◎大阪地裁の判決で勝訴した住民側の説明は無視、排除したまま

◎立地自体の同意だけで原発推進できる時代は終わった
◎「地域の恒久的福祉」を覆したフクシマの惨禍
◎「あとからくる者のために」

◎悲しみと強い抗議の意思をこめて

 4月20日、畑孝幸県議会議長あてに表記の請願書を提出し、翌日から断食に入りました。石森修一郎さん(坂井市)と共に7日間、8日目を迎えましたが、悲しみと強い意思をこめて、本日、断食を解きます。
 その理由を以下に述べたいと思います。

◎拙速に急ぎ、焦っていたのは、関西電力と国

 老朽炉3機の稼働再開を拙速に望んでいたのは決して美浜・高浜町や福井県ではありませんでした。
 関西電力と国こそ、再稼働を急ぎ、焦っていたのです。
 なぜなら、関西電力は特別重要施設(特重)の工事遅れのために、高浜原発は6月9日に、美浜原発は10月に停止することを規制委員会から命じられているからです。仮に高浜1号機を動かしたとしても、1週間前後に過ぎないでしょう。
 しかし、関西電力と国は、今後の国内の老朽炉再稼働のためにも、若狭の3機の再稼働の先行例を示すことを急いでいる訳です。
 4月6日に国が美浜・高浜両原発に最大限50億円の交付金を停止した途端、杉本知事も県議会も同意へ向けて拙速に動き始めたように思えてなりません。
 今回の両者の拙速な同意は、若狭の住民、福井県民、さらには関西圏や中京圏の市民の不安や安全よりも、関西電力・国のスケジュールの方を優先したものだと言えましょう。

◎福井県の原子力3原則に照らして

 今回の老朽炉の再稼働の是非をめぐる議論は、それのみに止まってはならなかったのではないでしょうか。
 請願書でも訴えましたように、「福井県の原子力3原則」−
 [1].原発の安全が確保されること、
 [2].住民の理解と同意が得られること、
 [3].地域に恒久的福祉がもたらされること−
 に照らして、半世紀に及ぶ15基もの原発集中化の過去と現状をふまえて未来を展望する、総括的・総合的な議論が求められていたのではないでしょうか。
 以下に、拙速な議論と見切り発車した同意から積み残された問題点を、今後の議論や取り組みにもそなえて、原則ごとに1.2の具体的な問題点を指摘しましょう。

◎大阪地裁の判決で勝訴した住民側の説明は無視、排除したまま

 [1].の「安全の確保」について−昨年12月6日の大阪地裁の判決は、規制委員会が自ら設けた安全審査ガイドに違反した審査に「過誤・欠落」があったとの理由で、大飯原発の差し止めを命じました。
 が、県議会と杉本知事は、敗訴した国側の説明だけを聞き、勝訴した住民側の説明は無視、排除したままです。
 住民側は、裁判長が指摘した「ばらつきへの考慮」を美浜・高浜原発の地震動に適用すれば、933ガルが1330ガルへ、700ガルが1100ガルへはねあがると危惧しています。
 また、内閣府の避難計画の事故想定によれば、環境に放出される放射能汚染度を1.平均値の10倍、2.400倍、3.10000倍の3段階を想定しています。
 美浜原発の30キロ圏内に琵琶湖が存在していますが、1.の段階で飲食物の摂取制限の準備が始まります。
 その琵琶湖が水源の1450万人の関西圏の市民も、「老朽炉をうごかすな!」の声をあげ、その声はますます広がっています。
 屋内退避を余儀なくされていた住民が避難の指示を受けるのは、実に3.の段階に入ってからなのです。
 説明会で内閣府の担当者に、小浜市民の私はたとえ避難できたとしても再び故郷へ帰還できるのかと質問しましたが、明確な答えは得られませんでした。
◎立地自体体の同意だけで原発推進できる時代は終わった

 [2].の「住民の理解と同意」について−今年の3月18日の前田英子水戸地裁裁判長は、東海第二の老朽原発の再稼働を運転してはならないとの判決を言い渡しました。
 その理由は、同原発の30キロ圏内の14自治体、94万人の避難計画の不備でした。従来の同意見は、同原発の立地する東海村の村議会・村長と茨城県の県議会・県知事に限定されていたわけです。
 狭小な地域、少数の住民に限れば、行政手続きを容易に進めることができ、交付金や保証金の配分も安上がりにするためであったことは否めません。
 美浜・高浜の議会・町長や福井県議会や県知事の同意権だけを独占し、その同意を関電や国も推進の口実にできる時代は終わったのだということを、前田判決は宣告しているのでしょう。[2].の原則を新たな、大きな視野からとらえ直すべきではないでしょうか。

◎「地域の恒久的福祉」を覆したフクシマの惨禍

 [3].の「地域の恒久的福祉」について−もんじゅ事故後の合計110億円、プルサーマル実施にまつわる60億円、30年超の運転にかかわる100億円の交付金の延長上に、今回の50億円の提示がありました。たぶん福島も同様の交付金づけになっていたでしょうが、福島第一原発事故で故郷を根こそぎ奪われたあの惨禍によって、それらの原発マネーが何を意味していたのかを、福島県民は骨身にしみて認識したはずです。
 私たち福井県民も、[3].の「地域の恒久的福祉」について熟議する必要がある所以です。

◎「あとからくる者のために」

 なお、印象に残った杉本知事と県議会の行動を記憶しておきたいのです。杉本知事がモットーの現場主義を自ら実践されたのでしょうが、敦賀市での国の説明会に5時間も同席され、嶺南の住民の不安や疑問に真摯に耳傾けられていた姿。
 県議会の全員協議会で関電と国に対して、請願者等の声を反映した質疑を7時間も展開されたこと。これらの姿勢はぜひ今後の県政、議会運営に発展させていただくことを期待してやみません。

 「老朽原発うごかすな!」の広範な声と運動に励まされ、断食をあたたかく支えていただいた全ての皆さんに感謝し、これからも老朽炉の廃炉はもちろん、原発ゼロ社会をめざして、ともに歩み続けたいと決意を新たにしている次第です。
 最後に、請願書の末尾にもそうしましたが、坂村真民さんの詩「あと
からくる者のために」を掲げます。           合掌

※仏教者の断食修行は、本来、自分の血液を浄化し、ぜい肉をそぎ、呼吸を静穏にととのえ、精神を明澄にするためかと思います。それを社会的抗議の手段に用いるのは邪道かもしれないと、忸怩たる想いを禁じ得ない、一方の私も在ります。

    あとからくる者のために
坂村真民
あとからくる者のために
苦労をするのだ
我慢をするのだ
田を耕し
種を用意しておくのだ
あとからくる者のために
しんみんよお前は
詩を書いておくのだ
あとからくる者のために
山を川を海を
きれいにしておくのだ
あああとからくる者のために
みなそれぞれの力を傾けるのだ
あとからあとから続いてくる
あの可愛い者たちのために
未来を受け継ぐ者たちのために
みな夫々(それぞれ)自分で出来る何かをしてゆくのだ
KEY_WORD:40年超原発再稼働_:FUKU1_:MONJU_:TOUKAI_GEN2_:MIHAMA_:TAKAHAMA_:OOI_: