[2021_04_28_05]40年超原発「避難できないのでは」 危機管理に住民不安消えず(毎日新聞2021年4月28日)
 
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40年超原発「避難できないのでは」 危機管理に住民不安消えず

 福井県の杉本達治知事が28日、「40年超原発」の再稼働に正式に同意した。関西電力の美浜原発3号機(同県美浜町)と高浜原発1、2号機(同県高浜町)の地元では、事故発生時に安全に避難できるのか、懸念する声が根強い。10年前の東京電力福島第1原発事故の直後から指摘されてきた懸案で、住民からは「実際には避難できないのではないか」と疑問の声が上がる。
 1970年に初送電した美浜原発は、関電にとって「パイオニアの地」。雇用創出や税収などで地元も潤った。しかし、福島第1原発事故以降、1、2号機が廃炉となり、3号機も停止した。松下照幸美浜町議(72)は3号機も廃炉になると思っていたと言い、「『老朽原発』が大地震に耐えられるか疑問だ」と話す。今年1月に政府の原子力防災会議が了承した避難計画では、町民の避難先は大飯原発が立地する同県おおい町とされた。「地震や津波でどうなるか分からない原発立地町に避難するのは、安易な選択だ。人口も美浜町より少なく、本当に収容できるのか。県外でなるべく遠くに逃げられるようにするのが行政の務めではないか」。疑問は尽きない。
 渋滞も不安要素となっている。人口約8万2000人の同県越前市は、美浜原発で避難計画を要する30キロ圏内の緊急防護措置区域(UPZ)の中で、避難対象住民が最も多い。大半がマイカーを使って北陸自動車道や国道8号で県北部や石川県に避難することが想定されているが、同市内に住む映像制作業、若泉政人さん(54)は「渋滞が起きるのは必至で、地震による土砂崩れなどで道路が寸断されることもありうる」と懸念する。
 そこに、豪雪地帯特有の事情が重なる。今年1月9日から3日間、県北部は大雪のため北陸自動車道で最大約1500台が巻き込まれる立ち往生が発生。並行する国道8号でも10〜12日、最長15キロの渋滞が起きた。若泉さんは「地震や大雪など現実に起きた災害を基に、最悪の事態を想定するのが危機管理の鉄則のはずだが、自治体ができているとは思えない」と指摘する。
 課題を抱えたまま、地域は原発と共存してきた。高浜原発の直近にある高浜町音海地区の50代の男性は「40年以上も動かす(運転する)とは聞いておらず、(再稼働に)反対もしたが、周りには関電で働く人がいて、少人数ではあきらめるしかない。だが、福島の事故があったのだから、目の前の原発への不安は消えない」と語った。【大島秀利】
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