[2011_12_16_01]3.11大震災 青森考 フクシマの教訓 第5部 県内施設安全性を問う2 東通原発 免震棟なし 大間は免震構造を採用 (東奥日報2011年12月16日)
 「5300トン(の建屋)を20台の免震ゴムが支えています」−。今月13日、日本原燃・六ヶ所再処理工場敷地内。日本原燃の斎藤英明土木建築部長は、1日に運用を始めたばかりの新緊急時対策所で、同対策所の免震構造を報道陣に説明し、胸を張った。同対策所には、地震のエネルギーを吸収して揺れ幅を抑える「オイルダンパー」4台や、免震ゴムの変形を抑制する「ソフトランディング装置」なども配備。震度7クラスの地震にも耐えられるという。建設費は約20億円。
 2007年7月の新潟県中越沖地震で東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の事務本館が被災し、扉がゆがんだ。このため、事務本館内にある、緊急時の通信機器を備えた緊急時対策室に職員が入室できなくなり、通信機能が使えなかった。日本原燃を含め全国の原子力事業者が一斉に免震棟新設に動いたのは、このトラブルが教訓となっている。
 事故後、9カ月たっても放射線量の高い状況が続く東京電力福島第1原発の事故現場。地震、津波などで構内施設が深刻な被害を受けた中で、現在も事故対策拠点の役割を果たしているのが「免震重要棟(免震棟)」だ。
 同原発の免震棟も、中越沖地震を教訓に東電が昨年7月に運用を開始した。震度7クラスの地震にも耐えられる設計で、緊急時の通信機器も備える。
 福島の現場作業員は今も免震棟の中で防護服を重ね着し、フィルター付きマスクで顔を覆うなどの装備を整え、事故収束の作業に向かう。本来、原子力災害時の防災拠点となるはずだった国のオフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設)は地震でまったく機能しなかった。免震棟は前線での事故対応の唯一の砦(とりで)となった。

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 一方、東北電力東通原発は免震棟を備えていない。同原発の緊急時対策室は、敷地内の管理事務所内に置かれているが、免震構造の施設ではない。同じ東北電力の原発でも、敷地内に免震構造の事務新館(緊急対策室)を新設した女川原発(宮城県)とは対照的だ。
 東通原発の阿部正信技術課長は「(東通原発の管理事務所は)比較的新しい建物で、耐震性があると評価している。この(今の)時点では免震棟を建てなくても大丈夫」と説明しつつも「福島の事例を見ると、(重要機器を守る)免震という意味だけでなく、作業員が滞在する活動の拠点としての重要性もある。免震棟は今後の検討課題」(阿部課長)と免震棟新設に含みを残す。中越沖地震を受けた対応としては、建屋などの耐震補強に取り組んでおり、排気筒の補強工事が終われば一連の補強は完了するという。

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 電源開発は、追加対策の必要性に触れた県原子力安全対策検証委員会の提言を受け、建設を進める大間原発の緊急時対策所に免震構造を採用することを決めた。同社の日野稔副社長は「今回の提言を受け(免震建屋の)設置を具体化する。大間原発の建設中に行う」と決意を示す。
 むつ市に使用済み核燃料中間貯蔵施設の建設を進めているリサイクル燃料貯蔵(RFS)は、09年11月に完成した事務建屋の基礎部分に、積層ゴムなど3種類の免震装置を組み合わせて使用。建屋内には緊急時対策室を設けた。
 原子炉メーカー東芝の技術者だった北海道大学大学院の奈良林直教授(原子炉安全工学)は「地震による重要機材の揺れを防ぎ、電子機器、通信手段を確保することが重要だ。東通原発でも制御盤の免震床の設置は容易だし、ガスタービン電源なども免震床や建屋に収納した方がいい。将来的に、原子炉建屋とタービン建屋を一体として免震建屋に設置する次世代原発の開発を推進すべきだ。活断層の有無の問題や立地の制約も解消できる」と指摘している。
 (安田奈津子、安達一将、加藤景子)
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