[2020_05_14_08]14兆円政策に利点なし 核燃再処理工場が新基準「適合」(東京新聞2020年5月14日)
 
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14兆円政策に利点なし 核燃再処理工場が新基準「適合」

 日本原燃の使用済み核燃料再処理工場は稼働へのハードルを一つ越えた。だが、再処理を要とする政府の「核燃料サイクル政策」は破綻しており、工場稼働の利点はない。総額14兆円を投じる政策は全面的な見直しを迫られている。(福岡範行、小川慎一)

置き場なし

 政府が再処理工場の稼働を急ぎたい背景には、原発の使用済み核燃料の置き場不足の問題がある。
 経済産業省資源エネルギー庁によると、各原発のプールなどに貯蔵中の核燃料は、貯蔵容量全体の7割強を占める。プールが満杯になれば、原発は運転ができなくなる。
 一方、再処理工場のプールも原発から運び込まれた核燃料でほぼ満杯状態で、2016年11月以降は受け入れをやめている。
 六ケ所村では、再処理工場で核燃料からプルトニウムを取り出し、別の工場でウランと混ぜて混合酸化物(MOX)燃料に加工する計画も進める。日本原燃は22年度前半に燃料工場の完成を目指すが、規制委の審査は終わっておらず、稼働時期が見通せない。

需要なし

 たとえ二つの工場が完成しても、コストの高いMOX燃料の需要そのものがない。電力業界は、通常の原発でMOX燃料を使う「プルサーマル発電」の導入を全国16〜18基で目指したが、輸入燃料を使って導入してきたのは4基だけ。その消費量もわずかだ。
 MOX燃料だけを使う大間原発(青森県)は、東京電力福島第一原発事故後に建設を中断。高速炉での使用も想定されていたが、実験段階の高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)はトラブル続きでわずか250日しか稼働せず、16年に廃炉が決まった。
 政府は、繰り返し核燃料を再利用できるかのように宣伝してきたが、そもそも使用済み核燃料を直接捨てずに再処理する必要がなくなっている。

捨て場なし

 再処理で発生する高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分先や、使い終わったMOX燃料をどうするのかは、見通しすら立たない。
 核のごみは地下深くに埋めて最終処分する計画だが、候補地は未定。再処理工場が稼働すれば、行き場のない核のごみがたまり、六ケ所村が事実上の最終処分場になりかねない。
 規制委の更田豊志委員長は13日の記者会見で、再処理工場稼働について「念のため経済産業相に、政策と整合したものかを確認したい」とし、「得られる便益より、与える害の方が大きい施設は許容されない」と指摘した。
 政府は課題を棚上げにして、原発の稼働を続けてきた。消費者が支払う電気代を元に総事業費14兆円を投じる政策の破綻を認めてエネルギー政策を今見直さなければ、将来世代に大きな負担だけを押しつけることになる。

パブコメは6月12日まで、規制委

 規制委は5月14日〜6月12日、使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)が新規制基準に事実上「適合」したことを示す審査書案について、国民から意見を募る。
 応募はインターネット、郵送、ファクスの3通り。いずれの場合も規制委のホームページの「手続き・申請」からパブリックコメントにアクセスし、「意見募集案件」から電子政府総合窓口のページに入る。ネットの場合はそのまま「意見提出フォームへ」をクリックし、必要事項を記入し送信できる。
 郵送やファクスは、電子政府総合窓口で「意見提出用紙」をダウンロードする。宛先は〒106-8450 東京都港区六本木1の9の9 六本木ファーストビル 原子力規制庁核燃料施設審査部門。ファクスは03(5114)2181へ。
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