[2019_11_07_08]東海第二、運転延長容認から1年 東電が支援 根強い批判 県民投票で是非問う動きも(東京新聞2019年11月7日)
 
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東海第二、運転延長容認から1年 東電が支援 根強い批判 県民投票で是非問う動きも

 運転期限の四十年が迫っていた東海村の日本原子力発電(原電)東海第二原発で、最長二十年の運転延長を原子力規制委員会が認めてから、七日で一年。原電は、再稼働に必要な巨額の安全対策工事費について、福島第一原発事故を起こした東京電力から支援を受ける方針だが、批判は消えない。一方、再稼働の同意を求められる周辺自治体は、住民の意思をどうくみ取るか模索を続ける。 (宮尾幹成、松村真一郎)

■前払い

 「福島第一原発事故の収束作業や賠償を最優先するべきだ」。六日夜、東京・千代田区の東電本店前。東海第二の再稼働に反対する市民らが集まり、東電が原電に二千二百億円超とみられる資金支援を決めたことに抗議の声を上げた。
 東海第二は、テロ対策施設などを含めた工事費が当初見込みの約二倍の三千五百億円に膨らんだ。
 原電は原発専業の会社だが、所有する原発は全て停止中。自力で資金調達できず、株主の大手電力に支援を要請した。東海第二で発電した電気を買う契約を結ぶ東電と東北電力で八割、原電敦賀原発(福井県)の電気を買う関西、中部、北陸各電力で二割を負担する構図が固まった。
 東電は、東海第二の再稼働後に支払う電気料金を前払いする形で支援し、東北電は原電が金融機関から借り入れる資金への債務保証を決めた。
 ただ、東電が原電を資金支援することに批判は大きい。原発事故で少なくとも二十二兆円に上る廃炉や賠償の費用を国などに返済する必要があるためだ。
 国際環境NGO「FoE Japan」(東京)は十月二十八日、東電に資金支援の撤回を求める声明を発表した。巨額の公的資金が注入されている東電は、他社を支援する立場にないと指摘。安全対策費がかさんだ東海第二の電気は非常に高額になると予想されるとして「(支援に)何ら経済的な合理性はなく正当化できない」と批判する。
 仮に東海第二が地元の反対などで再稼働できず、支援した資金の回収が困難になれば、消費者が東電に支払う電気代に跳ね返る恐れもある。

■万単位

 原電は、東海第二の三十キロ圏の六市村と原子力安全協定を結んでおり、再稼働に当たっては事前同意を得る必要がある。六市村が再稼働の是非を判断するのに当たり、民意は無視できない。だが、どのように住民の意向を確認するかは手探り状態だ。
 東海村の川又則夫・防災原子力安全課長は「何らかの仕組みを作らなければならないと思っているが、現段階で決まっていない」と話す。
 中国電力島根原発がある松江市では、無作為に選ばれた市民に原発問題を議論してもらう市民グループの取り組みが注目を集めた。山田修村長は「村でもやる価値はある」と関心を示すが、具体的な動きはない。
 六市村で最多の約二十七万人の人口を抱える水戸市は、高橋靖市長が「万単位で市民の意見を聞いて、再稼働の是非を判断したい」と大規模なアンケートを取る考えを示す。もっとも、時期や方法は未定だ。
 常陸太田市は、教育や福祉、農業など各分野の市民から意見を聞く場を設ける予定。だが、原電から判断材料となる資料が示されていないため「現段階では何もできない」(防災対策課の西野保課長)。
 日立市は六月から、住民や学識経験者らが参加する原子力安全対策懇談会を開き、避難計画などについて意見を出し合っている。小川春樹市長が再稼働の是非を判断する参考にするが、大規模に住民の意向を調査するかは決まっていない。
 一方で、再稼働の是非を問う県民投票の実現を目指す動きもある。市民団体「いばらき原発県民投票の会」は、県民投票条例の制定を大井川和彦知事に直接請求する方針で、来年の六月県議会での条例案上程に向け、一月から五万筆を目標に署名活動を始める。会の曽我日出夫事務局長は「市民の意向を県全体で把握する機会をつくりたい」と話す。

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