[2021_08_17_01]中国電力島根原発2号機のパブコメ提出文章を紹介 地震、津波、避難計画に大きな問題 (上)(3回の連載) 福島第一原発事故の教訓を全く生かしていない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年8月17日)
 
参照元
中国電力島根原発2号機のパブコメ提出文章を紹介 地震、津波、避難計画に大きな問題 (上)(3回の連載) 福島第一原発事故の教訓を全く生かしていない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

項目紹介
1.地震による損傷の防止(第4条関係)(10頁)
2.耐震設計方針 耐震重要度分類の方針(30頁)
3.福島第一原発事故の教訓を全く生かしていない
 以上を(上)に掲載
4.外部火災に対する設計方針
5.津波による損傷の防止(第40条関係)(325頁)
6.原子炉制御室及びその居住性等に関する手順等(第26条、
第59条及び重大事故等防止技術的能力基準1.16関係)(460頁)
 以上を(中)に掲載
7.緊急対策所及びその居住性等に関する手順等(第34条、第61条
及び重大事故等防止技術的能力基準1.18関係)について(480頁)
8.原子炉圧力容器外の溶融燃料−冷却材相互作用(259頁)
水蒸気爆発が実機において発生する可能性(263頁)について
9.水素燃焼について(264頁)
10.地震による損傷の防止について(第39条関係)
1.耐震設計方針(322頁)
 以上を(下)に掲載

 2021年7月24日までの期限で、島根原発2号機のパブコメが実施されました。
 パブコメの表題は「中国電力株式会社島根原子力発電所2号炉の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書案に対する科学的・技術的意見の募集について」で、対象になった文書は、「島根原子力発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(2号発電用原子炉施設の変更)に関する審査書(案)」です。
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000220649
 これまでにも、パブコメのため、何度も審査書案を読んできましたが、島根原発固有のところは地震や津波の想定などいくつかありますが、それ以外は他のBWR(沸騰水型原子炉)と大きな違いは見られません。
 東海第二原発や柏崎刈羽原発のそれと同様の記載が随所に見られるということです。
 設計が同じならば同じ記載になるというのでは、パブコメの意義はなくなります。同一設計プラントでも、様々な想定が異なるので、それに対応する対策は必要です。そのことは記載されていません。
 審査書案とは、設計上の対処方針を大まかに記載した文書に過ぎず、いかなる事態が生じたら何をする、といった具体性はありません。
 以下に、パブコメで送った各論を掲載します。
 なお、実際に送ったものに対して、分かりにくいところ、専門用語などで説明をしているところなどは、一部書き換えていることをご了承ください。

1.地震による損傷の防止(第4条関係)(10頁)

 地震想定及び基準地震動などについて記載されているが、結論としては基準地震動は最大820ガル「基準地震動Ss−D(最大加速度:水平方向820cm/s2、鉛直方向547cm/s2)」とされている。これは、今までに規制基準適合性審査により審査された原発の中でも小さい。
 震源を特定できない地震でもマグニチュード7.3の地震が起きているうえ、その1つが「平成12年(2000年)鳥取県西部地震」と気象庁により命名された、2000年10月6日の地震だ。
 この地震は、既知の地震断層を震源としておらず、いわば未知の断層活動により発生したものである。
 震源は鳥取県米子市南方約20kmの北緯35度16.4分、東経133度20.9分、マグニチュード7.3で地下浅部、地震震源深さは9kmであった。
 このような断層を全て把握することはできないので、震源を特定しない地震も想定することとされているが、その規模は余りに小さすぎる。
 地震想定は最低でも既往最大の開放基盤表面で2000ガルを想定すべきである。
 島根原発は鳥取県西部地震の震源域にも近い。特にこのような未知の断層の影響は考慮すべきである。

2.耐震設計方針 耐震重要度分類の方針(30頁)

 耐震重要度分類については「耐震重要度に応じて、Sクラス、Bクラス、Cクラスに設計基準対象施設を分類すること(以下「耐震重要度分類」という。)を要求している。」としている。
 これについては、例えば圧力バウンダリについては全て耐震クラスSである。しかし圧力バウンダリに冷却材を注入する系統が全てSクラスにはなっていない。これは安全上重大な問題である。
 例えば耐震重要度分類の矛盾については吉田昌郎元福島第一原発所長も次のように述べている。
 「シビアアクシデント上は、MUW(Make Up Water System 補給水系)だとか、FP(消防用水系)を最終注水手段として、何でもいいから炉に注水するようにしましょうという概念はいいんですけれども、設計している側に、本当にそれを最終的に注水ラインとして使うんだという意思があるんだとすると、耐震クラスをAクラスにするでしょう。それ以外のラインが全部耐震クラスAだし、電源も二重化しているようなラインが全部つぶれて、一番弱いFPと、MUWは今回なかったわけですけれども、そういうものを最後に当てにしないといけない事象というのは一体何か、私にはよくわからないです。」
 この中で耐震クラスAとしているところが、現状のSクラスであるが、状況は全く同じである。この意見には全く同感だ。

3.福島第一原発事故の教訓を全く生かしていない

 最終的に冷却材を圧力容器ないし格納容器に注入するラインについては、無条件で全てSクラスの設計とすべきであり、それが成されていないならば使用すべきではない。
 これらは原子炉から崩壊熱を最終ヒートシンク(海)まで輸送するための設備であり、一貫して耐震重要度は最大であるべきだ。
 また、新設ないし増強した注入ラインについては、全て実機において注入できることを実際の運転圧力及び過酷事故時想定圧力に上げて試験を行う必要がある。
 過去の過酷事故対策装備(システム)は全て設備を設置した後に稼働または成立性試験を経ていない。
 そのため福島第一原発事故では。ラプチャーデスク(ベントラインの途中にある閉塞弁、格納容器圧力が規定値を超えると耐えきれずに破断する仕組みを使う弁で動力は要らない)の状態から、格納容器ベントラインが作動しているかどうか、未だに分からないという信じがたい問題が生じているのである。
 非常用取水設備なども全てSクラスとするべきであり、これらをCクラスとしている審査には瑕疵があり無効である。(中)に続く
KEY_WORD:SHIMANE_:FUKU1_:TOTTORI_:KASHIWA_:TOUKAI_GEN2_: