[2018_12_31_01]病院より泊原発に送電 停電復旧で北海道電 発電機あり低い緊急性(北海道新聞2018年12月31日)
 
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病院より泊原発に送電 停電復旧で北海道電 発電機あり低い緊急性


手順見直さない考え

 北海道電力が9月の胆振東部地震に伴う全域停電(ブラックアウト)からの復旧作業で、火力発電所への電力供給と並行して停止中の泊原発(後志管内泊村)にも優先的に電力を送っていたことが分かった。使用済み核燃料の冷却に電力が必要なため、この判断に一定の妥当性はあるものの、泊原発は非常用発電機を備え、必ずしも停電後の早い段階で外部電力を必要としない。北電は今後もこうした手順を見直さない構え。病院などより動かない原発を優先した対応を疑問視する声も出ている。
 ブラックアウトの原因などを検証した国の認可法人、電力広域的運営推進機関(東京)への取材で分かった。ブラックアウトは地震による苫東厚真火力発電所(胆振管内厚真町)停止などに伴い、9月6日午前3時25分に発生。北電は直ちに復旧作業に入り、同4時から水力発電所を順次動かして電力を確保。それをもとに同4時49分に苫東厚真火発に送電するなど主力の火発の復旧を試みた。
 泊原発へ送電を始めたのはこれに続く同6時7分。泊原発内の変圧器トラブルなどで同6時21分に送電が止まり、同8時52分の送電再開を受けて午後1時に泊1〜3号機への電力供給が正常化する。その後、各地の火発を立ち上げ、地域ごとに電力の復旧を順次進め、8日午前0時13分にブラックアウトが解消された。

「北電の姿勢露呈」の声も

 泊原発は3基とも原子力規制委員会の再稼働審査に合格していないが、使用済み核燃料を保管するプールに水を絶えず送って冷やし続ける必要がある。今回の停電では、電力供給が正常化するまで必要な電力を計6台の非常用ディーゼル発電機でまかなかったが、規制委によると、少なくとも7日間は外部電源なしで動いたという。
 北電は、外部電力も確保したことについて「電源を重複化することが必要」(広報部)としている。規制委は原発優先の停電復旧までは求めておらず、一連の対応に柔軟性があったかは議論が分かれそうだ。
 結果的に被災者支援に当たる病院や自治体庁舎をはじめ多くの家庭や企業よりも、動かない原発への電力供給を優先させた格好で、小野有五・北大名誉教授は「患者の命が危険にさらされていた病院より、送電が不要なはずの原発を優先した。北電の姿勢が露呈したと言わざるを得ない」としている。(長谷川裕紀)


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