[2017_06_09_03]原研 ずさんな専門集団 大洗被ばく、核物質の不適切保管が要因か(東京新聞2017年6月9日)
 
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原研 ずさんな専門集団 大洗被ばく、核物質の不適切保管が要因か

 日本原子力研究開発機構「大洗研究開発センター」(茨城県)の作業員被ばく事故で、現場の燃料研究棟は、核燃料サイクルの中核施設、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)の燃料開発などを担っていた。危険な核物質を扱う機構ではこれまでも、運営施設で安全管理の不備が続いている。(越田普之、荒井六貴、小川慎一)

 「原子力の専門家集団として、重く重く責任を感じている」

 センターの塩月正雄所長は八日、茨城県庁で取材にこう語った。
 研究棟では六日午前、作業員が核燃料物質の貯蔵容器を開けたところ、中のビニール袋が破裂し、粉末状のプルトニウムを吸い込んで四人が大量に内部被ばくした。貯蔵容器は一九九一年に封印され、以降二十六年間、未開封だった。
 施設は七四年に設置。毒性が強いプルトニウムを扱っていたのは、「夢の原子炉」と言われたもんじゅの新しい燃料を開発するためだったが、もんじゅはナトリウム漏れ事故などで稼働実績がほとんどなく、燃料需要は低かった。
 研究棟は役割を終えたとして二〇一三年に廃止が決定。もんじゅもその三年後、廃炉が決まった。
 今回の事故の背景には、機構のずさんな管理があったとみられる。
 原子力規制委員会は今年二月、機構の複数の施設で核燃料物質が保管すべきではない場所に長期間置かれていたとして、改善を求めた。被ばくした作業員は、こうした管理が不適切な核燃料物質の保管場所を探していたという。
 事故はずさん管理の「後始末」で起きたともいえる。もし機構が核燃料物質を適切に保管していれば、避けられた可能性が大きい。
 「原子力の専門家集団」を自任する機構だが、安全管理でこれまで何度も問題を起こし、規制委から安全軽視の姿勢を繰り返し指摘されている。
 もんじゅでは約一万件の点検漏れが発覚。機構は反省を口にしたが、その後も新たな点検漏れが次々と見つかり、規制委から「資質なし」と勧告された。
 使用済み核燃料の再処理施設(茨城県東海村)でも、放射性廃棄物を詰めた大量のドラム缶が敷地内に雑然と積み上げられ、中身が分からない容器さえある。
 今回事故が起きた大洗研究開発センター内にある高速実験炉「常陽」の再稼働を申請した際には、原子炉出力を本来より低く記載し、規制委から改めるよう命じられた。地元対策を簡略化して、早く再稼働させるためだった。

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