[2017_07_17_02]東海第2適合審査、時間との戦い 原電、防潮壁評価も課題残す(茨城新聞2017年7月17日)
 
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東海第2適合審査、時間との戦い 原電、防潮壁評価も課題残す

 日本原子力発電(原電)東海第2原発(東海村白方)の適合性審査で原電は、防潮壁の設計方針で原子力規制委員会が求めていた液状化対策の実施を決めた。規制委は、同対策を行わない場合、対策の要否を巡る議論に時間を費やし、運転開始から40年となる来年11月までに審査が終わらない可能性も示唆していた。今後は、防潮壁や液状化対策に関する詳細な議論に入るが、このほかにも多くの議論が残されている。今年11月が期限となる最長20年の運転延長認可申請の決断時期も迫り、原電にとっては議論の行方とともに、時間との戦いにもなりそうだ。
 「液状化の可能性の議論に時間を要する恐れがあり、液状化(すること)を前提に対策をする」。13日の審査会合で、原電の和智信隆常務は、地盤改良による液状化対策を実施する方針を報告した。防潮壁の構造も強化し、敷地北側のくいを地下約60メートルにある岩盤まで打ち込むと説明した。
 これまで原電は、地質調査で液状化の恐れがないとして、液状化対策をせずに鋼管くいを打ち込み、鉄筋コンクリートの防潮壁を建てると主張。これに対し、規制委は液状化対策の要否の議論だけで1年以上かかり、来年11月までに審査が終わらないと見通しを示し、対策実施を審査継続の前提としていた。
 原電の方針変更に規制委担当者は「前向きに対応してもらった」と評価し、液状化対策の議論で審査が期限に間に合わなくなる事態は回避されたとみられる。

■ 防潮壁の議論が浮上したのは4月。原電は防潮堤の構造について、審査申請当初のセメントで築く方法から、防潮壁を建てる方法に変更すると説明した。
 規制委は津波防護対策の議論に影響するため、早期に基本設計方針を示すよう要求。原電の村松衛社長は6月27日の規制委の臨時会合で、敷地南側は地下約25メートルの岩盤にくいを打ち込む一方、岩盤が地下約60メートルと深い北側は、地下約40メートルまでくいを打ち地層の大半を占める堅い粘土層で安定させると説明した。地質調査から液状化はせず、対策は不要とした。
 これに対し、規制委の更田豊志委員長代理は、液状化対策を実施するよう求め、同29日の審査会合でも原電の説明に納得せず、「原電が主張を変えないならば、(次回会合で)こちらの判断を伝える」(更田氏)とし、事実上の「最後通告」を突き付けた。

■ 原発専業の原電が保有する原発4基のうち、東海原発(同)と敦賀1号機(福井県)は廃炉となり、敦賀2号機(同)は原子炉建屋直下に活断層があると指摘され、再稼働の見通しは全く立たない。その中で東海第2は「原電にとって経営の重要な要素」(村松社長)とされ、厳しい経営環境の改善のためにも、審査に合格し、再稼働させることが求められる。
 今後の審査会合で、津波防護対策について議論が始まり、液状化対策の妥当性など詳しい検証が進められる。原電の和智常務は「大車輪で対応する」と気を引き締める。さらに、審査の重要論点の非難燃ケーブルの防火対策を中心とした建屋内部の火災対策や、炉心損傷などを引き起こす重大事故対策など、防潮壁以外にも多くの議論が残されている。 (高岡健作)

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