[2018_11_26_02]<志賀原発>事故訓練評価で最低 情報公開改善を(毎日新聞2018年11月26日)
 
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<志賀原発>事故訓練評価で最低 情報公開改善を

 原発の昨年度の事故対応訓練について原子力規制委員会が今年7月に公表した評価結果で、北陸電力志賀原発(石川県志賀町)は全国18の原発中、「情報共有」の項目で東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)と並んで最低評価の「C」だった。9の評価項目のうち、情報共有は規制委が最重要視していた。東電は改善計画を作り、訓練結果と共に公表した一方、北陸電は「規制委からの求めはない」と計画は作らず、結果も公表しない方針。北陸電は現在停止中の志賀原発の早期再稼働を目指しているが、有識者らは「市民の原発に対する不安を払拭(ふっしょく)するためにも情報は積極的に公表すべき」と指摘している。【鶴見泰寿】

 ◇国への連絡不調に

 訓練は原子力災害対策特別措置法に基づき、東京電力福島第1原発事故後の2012年度から原則、年1回実施。規制委は「適切な通報の実施」「広報活動」「通信機器の操作」など9項目について評価している。今年2月の志賀原発での訓練は、同原発と北陸電本部(志賀町)のテレビ会議などのシステムに多くの社員が殺到し、作動しなくなった。そのため、事故発生や進捗状況について、規制委に十分、伝わらない事態に陥った。このことで、情報共有の項目が全国最低評価につながった。原子力規制庁の担当者は「政府が緊急事態宣言を発令するかを判断するために必要な訓練」とその重要性を強調する。

 ◇東電は結果を公表

 同じく最低評価だった柏崎刈羽原発は再稼働に向け、昨年12月に新規制基準に適合したこともあり、東電は8月に計画と昨年度を含む過去3年間の成績を公表した。
 一方、北陸電は取材に対し公表はしないとし、「次回の訓練で、各課題の改善点を反映」と説明した。規制庁は「改善計画の提出を必ず求めているわけではないが、緊急時に備えて日常から準備は必要。次回も同じ結果になれば問題」と話す。

 ◇「マイナス情報の公開が市民の信頼に」

 志賀原発は敷地内に活断層がある可能性を規制委の有識者調査団に指摘されており、石川県の市民団体「さよなら!志賀原発ネットワーク」の中垣たか子共同代表は「断層があるだけでも市民は不安。訓練結果すら公表せず、改善計画を示さない姿勢を見れば、廃炉にしてほしいという思いが強くなるのは当然だ」と憤る。
 日本原子力研究開発機構の情報公開委員長を務める慶応大・鈴木秀美教授(メディア法)は「福島第1原発事故以来、日本社会は原発事故がいつか発生するかもしれないとの漠然とした不安を抱えている。マイナス面を積極的に発信し、正しい情報を公表する姿勢が市民の信頼を得ることにつながる」とした。その上で「今回の対応は後ろ向き。訓練結果を含めて自社の考えや今後の取り組みを公表すべきと考える。(訓練結果や計画を公表しない)北陸電は発想の転換が必要だ」と指摘した。

 ◇主な原発の事故対応訓練での「情報共有」の評価

大飯・高浜 B
福島第1  B
敦賀    B
美浜    A
福島第2  B
志賀    C
柏崎刈羽  C

※3段階評価でABCの順。原子力規制庁「原子力事業者防災訓練報告会の結果報告について」から引用

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