[2019_11_10_01]東電、展望なき原電支援=東海第2再稼働見通せず―破綻回避を優先(時事通信2019年11月10日)
 
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東電、展望なき原電支援=東海第2再稼働見通せず―破綻回避を優先

 東京電力ホールディングスは、東海第2原発(茨城県東海村、110万キロワット)の再稼働を目指す原発専業の日本原子力発電(原電)に、資金面で支援する方針を正式に決めた。再稼働に必要な安全対策工事費を原電が用意できないため、3割出資する筆頭株主の東電が約2200億円を負担し、他の電力大手4社と合計で約3500億円を拠出する見通し。ただ、肝心の再稼働のめどは立っていない。公的支援を受け福島第1原発事故の被害者に賠償金を支払っている東電が、原電を資金支援することへの批判も出ている。
 東電は株主としてだけではなく、原電から電力を購入してきた。東電が東海第2の再稼働を後押しする最大の狙いは「原電の経営破綻を回避する」(東電関係者)ことにある。原電が抱える原発4基のうち2基は廃炉作業中。敦賀原発2号機(福井県敦賀市)は原子炉建屋直下に活断層があると指摘され再稼働が難しく、残る東海第2の再稼働に原電の生き残りが懸かっているからだ。
 東電が負担する約2200億円は、東海第2再稼働後の電力購入代金を前払いする形を取っており、再稼働に失敗すれば回収は困難。さらに原電が破綻に追い込まれれば、これ以外に「東電など出資元の電力大手に巨額の損失が生じる可能性が高い」(電力業界関係者)とされる。電気代の上昇という形で国民にも負担が及びかねない。現在は再稼働に望みをつなぎつつ、資金支援で問題を先送りしている状況だ。
 東電は、東海第2の再稼働を支えることで「低廉で安定的かつ二酸化炭素の少ない電気をお客さまにお届けできる」(幹部)と説明している。しかし、安全対策工事費は当初見込んだ780億円の4.5倍に拡大。福島第1の事故後、原電に稼働中の原発がない中、5社合計で年間約1000億円に上る設備の維持管理費も支払ってきた。再稼働にこぎ着けたとしても、実質的な発電コストが事故前より大幅に増えるのは必至だ。
 支援の前提となる東海第2再稼働までの道は険しい。原子力規制委員会は昨秋、設備に老朽化の問題はないと判断し、2038年まで20年間の運転延長を認めたが、半径30キロ圏内には全国最多の約96万人が居住する。茨城県や周辺6市村の同意が得られる見通しは立っていない。
 原電に対する東電の資金支援差し止めを求めた訴訟で原告側代理人を務める河合弘之弁護士は、支援決定前の記者会見で「原発事故を起こした東電が別の原発を動かす金を出すのはおかしい」と訴えた。

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