[2019_09_17_02]原発事故、国民皆で考えて=公判「東電知る材料」−元規制委の島崎氏(時事通信2019年9月17日)
 
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原発事故、国民皆で考えて=公判「東電知る材料」−元規制委の島崎氏

 「東京電力の内情が分かり、国民一人ひとりが原発事故を考える材料ができた」。
 東電旧経営陣3人の東京地裁判決を前に取材に応じた原子力規制委員会の元委員長代理、島崎邦彦氏(73)は2年以上に及んだ公判の意義を、こう語った。
 島崎氏は福島県沖での巨大津波発生などを予測した「長期評価」策定に関わった地震学者。中心的な役割を担い、2018年5月、検察官役指定弁護士側の証人として出廷した。
 東電は02年7月に公表された長期評価に基づき、原発に到達する可能性のある津波高を「最大15.7メートル」と算出しており、長期評価の信用性も公判の大きな争点だ。島崎氏の証人尋問は2期日にわたり、指定弁護士側、弁護側双方からの質問に「地震や津波のトップの専門家が取りまとめた」「明らかに皆が認める事実や知見に基づいた」などと証言した。
 島崎氏によると、長期評価は一般防災の安全対策指針に反映される予定だったが、担当する内閣府の方針転換で実現しなかった。「反映されていれば津波であんなに多くの人が亡くなることはなかった。長期評価で対策すれば原発事故も防げたはず」。地震学者としての自責の念から委員長代理を引き受け、法廷にも立った。
 証人尋問を終えた後も公判の成り行きを注視しており、被告人質問での旧経営陣の受け答えには、「人命より経済を優先している」と感じたという。
 委員長代理時代を振り返り、「多くの電力会社は安全ではなく、審査を通るための対策をしている」と批判した島崎氏。「公判では、東電の社内メールや社員の証言など、事故を考える多くの材料が明らかになった。原発で何が起きたのか。判決にかかわらず、国民一人ひとりで考えてほしい」と訴えた。 

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