[2017_10_27_03]社説:大飯の避難計画 実効性の検証が足りぬ(京都新聞2017年10月27日)
 
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社説:大飯の避難計画 実効性の検証が足りぬ

 関西電力大飯原発(福井県)での事故に備え、政府と福井、京都、滋賀の3府県が避難計画を策定した。政府の原子力防災会議は近く合理的として了承する見通しだが、不安は拭えない。
 3府県は避難計画の策定が必要な原発の半径30キロ圏内にあり、京都府内5市町の約8万5千人や高島市の約1千人を含む計約15万9千人が対象となる。居住府県内だけでなく、大阪、兵庫、徳島への避難を想定している。
 関電は立地自治体の同意を得た上で、来年1月以降に大飯3、4号機を順次再稼働させる方針だが、約14キロしか離れていない関電高浜原発との同時事故は想定されなかった。
 だが、高浜3、4号機は既に稼働しており、大地震や津波などで同時に過酷事故が起きれば、避難計画で想定した避難車両を確保できないなどの問題が出てくる。内閣府は同時事故への対応について「検討すべき課題。これからスタートさせたい」と話すが、具体的な日程は決めていないという。
 避難計画で常に問われるのは実効性だ。同時事故まで含めた想定でなければ、住民が不安を抱くのは当然である。早急に策定を進めるべきだ。
 昨夏、高浜原発3、4号機の再稼働を前に、京都、滋賀を含めて避難計画の実効性を点検する訓練が行われた。そこでは孤立地域の移動手段に想定していたヘリや船が悪天候で利用できなかったり、一部住民が屋内退避すべきタイミングで避難したりと、計画のもろさが浮き彫りになった。
 検証結果は、今回の避難計画に加え、一部改正された高浜原発の避難計画にも反映されたが、緊急速報「エリアメール」が届かない山間部の住民に情報をどう伝えるかなどまだまだ課題は多い。訓練などを重ねて実効性を厳しく検証していく必要がある。
 大飯原発で過酷事故が起きれば、京滋だけで約8万6千人の住民が避難を余儀なくされる。高浜原発の事故も重なれば、避難はさらに困難を極める。にもかかわらず、再稼働の同意権が立地自治体に限られているのは、不合理と言わざるをえない。
 避難計画は、米国のように実効性を検証する審査や、近隣自治体の住民を含めた理解が要る。福島の経験を考えれば、30キロ圏を超えて被害が広がった場合の対策も考えておくべきだろう。そうした問題を曖昧にしたまま再稼働を進めるべきではない。

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