[2016_08_11_01]過去に大地震日本最大の活断層 中央構造線が間近に・・伊方原発再稼働これだけの危険/高知大学防災推進センター特任教授 岡村真さん (日本共産党嶺南地区委員会2016年8月11日)
 
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過去に大地震日本最大の活断層 中央構造線が間近に・・伊方原発再稼働これだけの危険/高知大学防災推進センター特任教授 岡村真さん

 再稼働に反対する国民多数の声を押し切り四国電力は8月12日に伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の再稼働を強行しようとしています。愛媛県伊予市沖や別府湾などで海底の断層調査を続けてきた高知大学防災推進センター特任教授の岡村真さんは、「自然に対して傲慢(ごうまん)だ」と警鐘を鳴らします。
(聞き手 三木利博)

−伊方原発の一番の問題は何ですか。
 岡村 日本最大の活動性を持つ長大断層・中央構造線が原発の敷地から6〜8キロ沖という近さに存在していることです。敷地前面には活断層が4本走っています。そんな危険な場所に原発を造った。中央構造線は過去7300年の間に少なくとも5回、大地震を起こしていることがわかっています。最も新しいのが420年前の1596年に別府湾を震源にしたマグニチュード(M)7クラスの慶長豊後地震で、大津波を発生させ、数日後には中央構造線に沿って、京都の伏見城を倒壊させる地震が起きました。
 中央構造編は1000年当たり8メートルずれていることがわかっていますが、次の地震がどのくらいの大きさで、いつ起きるのか、今の地震学ではわかりません。四国電力は「中央構造線の性状を十分に把握した」と主張していますが、科学的な態度とは相いれないし、このような電力会社の不遜な態度が福島原発事故を招いたのです。

 −四国電力は3号機増設の申請(1984年)で、敷地前面海域の断層について、1万年前以降は動いていないと主張し、国も認め、建設されました。
 岡村 私たちが調査したのは1990年くらいでしょうか。当時10万円で別府湾や伊予灘の海底を音波探査したら、断層でずたずたに切れていました。2000年前以降に動いていると92年に論文を発表しました。電力会社も調査したのに見つけられなかった。驚きました。危険な原発を動かす電力会社が、こんなに簡単にわかるものを見逃すのかと。私の原点はそこです。その時点まで、原発の問題点などについて積極的に考えてはいませんでしたが、非常にショックで、電力会社がどれほど精緻な検討をしたといっても信用できなくなりました。四国電力が海底の活断層の存在を認めたのは、私の知る限り97年以降です。

 −原子力規制委員会で了承された四国電力の基準地震動(想定される最大の揺れ)に疑問を呈していますね。

地震動は妥当か

 岡村 もともと伊方原発3号機は、活断層がないという前提で造られ、基準地震動は473ガル(ガルは、揺れの強さを表す加速度の単位)でした。現在の基準地震動は650ガルです。これは妥当でしょうか。たとえば2011年の東北地方太平沖地震の際、震源断層から50キロも離れた東北電力女川原発(宮城県)で636ガルが観測されました。日本最大の活断層の震源断層に極めて近い
 位置にある伊方原発の基準地震動がそれと同程度なのです。厳格に評価されたか疑問です。四国電力は中央構造線の長さを480キロにして検討したといっていますが、断層の傾きなど不確定な要素を伊方原発に不利な形で同時に重ねた計算をしていません。原発災害の深刻さを考えれば、最も不利な想定をすべきです。
 地震動の大きさだけではありません。中央構造線の中で、ずれの量が一番大きい場所が伊方原発の沖にあることです。地震を感知してから、原子炉を停止するための制御棒を操作するまでに時間的な余裕が少ない。そういう問題もあります。
 地震の強い揺れを観測する体制が整備され始めるのは、1995年の阪神・淡路大震災以降です。観測網の整備で2000ガル、4000ガルという非常に強い揺れが記録されてきました。熊本地震の前震でM6・5の規模なのに、上下動で1399ガルという大きな揺れが記録されました。地震のたびに驚かされます。日本の原発がそうした観測の前に造られたことに、根本の問題があると思っています。それを小手先の補強で動かすのは、自然に対してあまりにも傲慢だし、許されないことだと思います。

 −避難計画の実効性が検証されないなど再稼働までのプロセスも問題です。

避難できるのか

岡村 福島原発事故の状況を考えると、再稼働の是非を立地自治体だけの狭い範囲で議論してもだめだと思います。また事故は複合災害の中で起こる前提で考えなければいけません。四国は有数の地滑り多発地帯です。地腹が起これば、大規模な斜面崩壊、岩盤崩壊が発生し、道路も損壊します。津波が来れば船は出ない。地震が起きた後、たくさんの人がほんとうに避難できるのでしょうか。
 日本という国は本来、地震列島の上にあることを世界にアピールして、「原発はゼロにします」「再生可能エネルギーなどの技術に積極的に投資します」と宣言すべきではないでしょうか。世界的な日本の立ち位置としてそれが当然だと思いますが、逆方向を向いているのは問題です。

おかむら・まこと 専門は地震地質学、長期地震予測研究。海底の断層を探し、活断層の地震の起こり方を調査し、沿岸湖沼の津波堆積物を調査し、南海トラフで起きた過去の地震の活動履歴を研究。内閣府「南海トラフの巨大地震モデル検討有識者会議」委員、中央防災会議「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」委員、高知県南海地震長明浸水対策検討会委員など歴任。
(「しんぶん赤旗」2016年8月11日より転載)

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