[2020_11_13_03]核ごみ住民投票 北海道寿都町議会が否決 同数、議長裁決で 反対派は町長リコールへ(毎日新聞2020年11月13日)
 
参照元
核ごみ住民投票 北海道寿都町議会が否決 同数、議長裁決で 反対派は町長リコールへ

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分場選定の文献調査に応募した北海道寿都町の臨時町議会(定数9)は13日、応募の賛否を問う住民投票条例案を否決した。小西正尚議長を除く8人の賛否が4対4の同数となり、議長裁決で否決した。片岡春雄町長の「肌感覚」による応募の判断が議会で追認された格好で、反対派住民は町長の解職を求める直接請求(リコール)に踏み切ることを決めた。【高橋由衣】
 議会には全9町議が出席。町民ら18人が傍聴した。採決に先立ち、住民投票条例の制定を請求した反対派の住民団体「子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会」の三木信香共同代表(49)が意見陳述。「調査応募の判断は、町長の『肌感覚』という個人的なものでしかない。住民投票の実現に力をお貸しください」と訴えた。
 討論では、応募賛成派の町議1人と反対派の町議4人が発言。賛成派の木村真男町議は「町長が出した結論に改めて民意を問う必要はない」と条例案の否決を求めた。
 これに対し、反対派の沢村国昭町議は「住民に寄り添う答えを出さないと、何のために議員でいるのか分からない。二元代表制の議会として、住民投票の否決はあってはならない」と可決を求めたが、議長裁決で否決された。
 否決を受け、越前谷由樹町議は「中立性を欠き、独断的に町長の判断を受け入れ、真剣な議論を妨げている」として、小西議長の不信任決議を求める議案を提出したが、賛否同数で過半数を得られず廃案となった。
 閉会後、報道陣に否決の理由を問われた小西議長は「現時点では住民投票は必要ない。町長の判断を尊重する」と話し、理由については明言を避けた。
 三木さんは「条例案に反対する議員の発言は1人だけ。それも町長と同じように聞こえる。十分な理由なく採択されては納得いかない」と憤った。
 応募反対派の町議は「町議会は改革が進まず、町民にとって見えない存在になっている。住民の権利として当たり前になっている住民投票の条例案を否決する議会は、前近代的だ」と批判した。
 同会の吉野寿彦共同代表(60)は毎日新聞の取材に、会の有志2人と共に片岡町長のリコールに向け「運動を始める」と明言。「町民の代表としての責任を忘れている」として、一部町議もリコール対象とする案があると明かした。リコールは町の有権者(9月1日現在2515人)の3分の1以上の署名があればできる。
 応募決定を巡っては、町議が全員協議会で議論したがまとまらず、議長判断で町長に一任。「肌感覚」で住民の過半数の理解を得たと主張していた片岡町長が最終判断し、10月8日に応募を表明した。町内では11月中にも国の認可が下りる見通しで、原子力発電環境整備機構(NUMO)による立地調査の第1段階「文献調査」が始まる。

 ◇文献調査応募を巡る寿都町議(定数9)の立場と発言

<賛成>「住民投票は不要」
▽木村真男町議 最終処分事業は町の産業振興に役立つ。町長の決断に対し、改めて民意を把握することは整合性を欠く。
※ほか賛成派3町議は発言せず。

<反対>「住民投票すべきだ」
▽川地正人町議 住民説明会が開かれたが、町民の賛否は分かっていない。
▽越前谷由樹町議 住民の声を反映させるのは住民自治の基本。議会として行政機能のチェック、住民意思の反映が必要。
▽幸坂順子町議 町長の肌感覚での判断は個人的で町民を無視し民主主義を踏みにじるやり方。住民投票で町民の確かな意思を反映させることが重要。
▽沢村国昭町議 住民投票の実施は法律で保障されており、阻止できない。
KEY_WORD:寿都町_調査応募検討_: