[2017_08_06_01]核ごみ処分の研究静かに進行 北海道の幌延深地層研 「適地ない」根強い声も(北海道新聞2017年8月6日)
 
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核ごみ処分の研究静かに進行 北海道の幌延深地層研 「適地ない」根強い声も


 【幌延】政府は7月28日、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)処分の適地を示す「科学的特性マップ」を公表した。宗谷管内幌延町では日本原子力研究開発機構の幌延深地層研究センターが地下処分の技術研究を行っている。同センターは「国内のどこが処分候補地になっても対応できるよう研究している」と強調するが、「地震の多い日本に適地などあるのか」との声も根強い。候補地の絞り込みが本格化するのを前に、幌延の地下に入り研究現場の現状を見た。(天塩支局 山野辺享)

「ここではないどこか」で処分場建設
 エレベーターで西立て坑を降りること約4分。地下350メートルの水平坑道に着いた。全長は757メートルで8の字を描く。その一角に、核のごみに見立てた模擬廃棄物が埋められている。
 埋設試験は2015年に始まり、核のごみと同様に発熱する棒状ヒーターを高さ約170センチ、直径約80センチの鋼鉄製容器に収め約100度に熱している。周囲にどう熱が広がるか、外側の粘土にどう地下水が染み込むかなどを調べる。同行したセンター職員は「試験はほぼ想定通り」と話した。
 同センターは01年から研究を続ける。原子力機構は岐阜県瑞浪(みずなみ)市の瑞浪超深地層研究所でも研究を行っている。幌延は泥が固まった堆積岩、瑞浪は花こう岩など硬い結晶質岩の地層だ。同センター職員は「国内のほとんどの地層はこのどちらか」と説明。研究成果は将来、「ここではないどこか」で処分場建設に役立てられるという。

「フランスでも研究所周辺が処分地の方向」
 ただ、原子力機構の前身の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)元主任研究員で処分場の適地を探して全国を駆け回った土井和巳さん(86)は「地震が多く地下水も豊富な日本国内に適地などない。核のごみを地下に埋めるのは不可能」と言い切る。
 地上にあるセンターのPR施設「ゆめ地創館」に戻ると、機構が幌延町、道と結んだ核のごみの持ち込みを禁じる3者協定の写しが目に入る。山口義文所長(58)は「協定は順守する。このセンターが処分場になることはない」と明言した。
 今回、政府が示した科学的特性マップで、幌延町内の一部は油田や活断層の存在を理由に不適地に分類された。逆に一部は適地として処分候補地になる可能性を残した。住民団体「核廃棄物施設誘致に反対する道北連絡協議会」の久世薫嗣(くせしげつぐ)代表委員(73)は「フランスでも研究所周辺が処分地となる方向だ。国が一部でも適地とした以上、センター周辺が処分場に転用される懸念がある」と警戒する。

高レベル放射性廃棄物(核のごみ)とは
 原発の使用済み核燃料を再処理した後に残る放射能の極めて強い廃液。日本ではガラスと混ぜ固め、鋼鉄製容器に入れ、粘土でくるんで地下300メートルより深くに埋める計画。処分地は未定。日本原子力研究開発機構が処分技術の研究を行い、処分地の選定は国と原子力発電環境整備機構(NUMO)が行う。

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