【記事74385】北海道地震、SNSでデマ拡散 専門家「発信元確認を」(日経新聞2018年9月11日)
 
参照元
北海道地震、SNSでデマ拡散 専門家「発信元確認を」

 「厚真に居る自衛隊の方からの今来た情報です。地響きが鳴ってるそうなので、大きい地震が来る可能性が高いようです。推定時刻5〜6時間後との事です!!」。苫小牧市危機管理室には地震発生から2日が過ぎた8日夕、無料対話アプリ「LINE」などの投稿を見た市民から「本当に大地震が来るのか」「避難すべきか」などの問い合わせが相次いだ。2時間ほど電話が鳴りやまないほど対応に追われた。
 実際には大きい地震は発生せず、市危機管理室は「情報の発信源は分からない」とする。同日夜には市のホームページ(HP)とフェイスブックで「全て根拠のないものですので、冷静な行動をお願いいたします」と呼びかけた。
 8日夜に同じ内容の投稿が5人の友人から立て続けに送られてきた札幌市のタクシー運転手の男性(46)は別の友人に口頭で情報を伝えたという。男性は「自衛隊の情報と記されていたので信じてしまった。不安な気持ちをあおるようなことはやめてもらいたい」と憤る。
 このほか地震後には「大規模な断水が始まる」などの誤った情報も流れたため札幌市や函館市、帯広市などもHPやSNSで注意喚起している。
 政党の短文投稿サイト「ツイッター」の公式アカウントが投稿を削除、謝罪する事態も発生した。
 立憲民主党の公式アカウントは地震直後の6日午前、同党旭川事務所の情報として「石狩川浄水場の自家発電が故障しており、このままだと市内の約7割が断水する」とつぶやいた。
 しかし、同市が内容を否定。すると7日午前に「デマとの情報がありました。おわび致します。混乱させて大変申し訳ありません」と謝罪し、投稿を削除した。同党広報担当は「今後は政府や自治体などの公式発表しか発表しない」とコメントしている。
 災害時にデマが拡散する背景として、法政大の藤代裕之准教授(ソーシャルメディア論)は「災害時は確実ではない情報を発信したり、情報を流した後に状況が変わってしまったりするなど、悪意がなくても結果的に多くのデマが生まれる」と指摘する。
 藤代准教授は「被災地の状況が刻々と変わるなか、デマかどうか受け手側が見極めるのは難しい。せめて情報を拡散する前に一呼吸置き、発信元が本当に信頼できるのか確かめてほしい」と話している。

■過去の災害でもデマ 「サイバー巡回」も
 災害時のデマ拡散は繰り返されている。
 2011年の東日本大震災の時には千葉の製油所火災で「有害物質が雨と一緒に降る」という情報がインターネット上に広がった。16年の熊本地震では「動物園からライオンが逃げ出した」とする虚偽情報と画像がツイッターで拡散。熊本県警はデマを拡散した男性を偽計業務妨害容疑で逮捕(後に起訴猶予)した。
 18年6月の大阪府北部で震度6弱を観測した地震でも、ツイッターに「外国人は地震に慣れていないから犯罪をする」という情報が発信された。
 デマの拡散を防ごうとする取り組みもある。デマ拡散で被害を受けた熊本県では、県内4大学の学生からなるボランティア団体「KC3」が県警と連携してサイバーパトロールを実施。北海道地震では「広範囲で断水になる」など約40件の根拠のない書き込みを見つけ、県警に報告した。
 県警サイバー犯罪対策課の中林俊郎次席は「デマはただでさえ疲弊している被災者を不安に陥れるもの。学生の目線を借りながら防止につなげたい」と期待した。

KEY_WORD:KUMAMOTO_HONSHIN_:OOSAKAHOKUBU_: