[2020_11_07_04]【寄稿】日本政府は福島の汚染水を放出せず貯蔵するための敷地を確保せよ(朝鮮日報2020年11月7日)
 
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【寄稿】日本政府は福島の汚染水を放出せず貯蔵するための敷地を確保せよ

 福島原発事故が発生してから10年近くになる。日本政府は、福島原発の汚染水処理に頭を悩ませている。国際社会の注視はもとより、日本国内の反対世論にもかかわらず、汚染水を海に放出しようとしている。福島原発の放射線汚染水は120万トンに上る。約1000個の水タンクが福島原発の敷地を覆っているという。放射線汚染水が今も流出しており、敷地内には貯蔵スペースがないため、行き詰まっているようだ。
 日本政府が打ち出した方法は「希釈放出」だ。汚染水を海水と混ぜて環境基準を満たしてから排出するという。特に浄化する方法のないトリチウムのためだ。福島の汚染水におけるトリチウム濃度は、1リットル当たり73万ベクレルだという。ベクレルとは、原子一つが放出する放射線の単位だ。汚染水全体に含まれるトリチウムは860兆ベクレルと推定され、水に換算すると16グラムだ。日本の放出基準は1リットル当たり6万ベクレルである一方、韓国では4万ベクレルとさらに厳しくなっている。
 日本の汚染水に関する資料が正確なら、汚染水が韓国に到達してから与える影響はさほど大きくない。セシウムのような放射性物質による韓国近海の汚染は検出しにくい程度であり、トリチウムの増加量は1トン当たりに1ベクレルと思われる。この程度では放射線による被爆は心配することはない。水産物も日本周辺海域はともかく、数千キロ離れた韓国周辺海域の魚が食べられなくなるほどではない。一部の団体が主張するように、汚染水の放出による韓国の放射線被害を主張すれば、かえって日本の反撃を受ける可能性が高い。「太平洋でおしっこ」という言葉があるように、どんな物質でも海に捨てれば環境基準に合わせることができる。しかし、環境基準を満たしたからといって、海に投棄するのを正当化するのは違う。
 「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約(ロンドン条約)」はこうして結ばれた。ロンドン条約は海洋環境の絶対的保護を前提としているため、指定された許容物質を除いては、唯一の方法でない限り投棄を原則的に禁じている。条約によると、放射性廃棄物は投棄できない。ただし、国際原子力機関と当事国が採択した免除濃度以下なら可能だが、その基準については締結国間での合意を前提としている。日本政府は、ロンドン条約は公海上の投棄防止のためのものであり、福島の汚染水の放出は自国海域なので関係ない、と主張するかもしれない。しかし、ロンドン条約は海に続く河川水にも適用することを原則としている。また日本は、1993年にロシアが日本周辺の東海(日本海)に低レベルの放射性廃棄物を投棄した当時、激しく抗議した経緯がある。そのため近隣国家の懸念を軽んじてはならない。
 日本政府は、韓国も原発から放射性廃棄物を排出していることを主張する可能性もある。しかし、これは福島の汚染水とは別問題だ。経済活動はやむを得ず環境に影響を与える。汚染物質に対して排出基準を設けるのは、経済的利益を得ながらも環境への影響を最小限にとどめるためだ。そのため、原発運営による廃棄物に許容基準を設け、その代わり安価で安定したエネルギーという利益を得るのだ。韓国の原発と同様、日本の原発運営による廃棄物の放出は理解できる。しかし、福島の汚染水は、このような原発の運営からやむを得ず出たものではない。
 チェルノブイリの原発事故がきっかけとなり、安全のために世界原子力事業者協会が発足した。米国はTMI(米ペンシルベニア州スリーマイルアイランド原子力発電所の2号炉)での事故以降、原発運営機構を設立し、安全性を高めるきっかけとした。福島での原発事故が、韓国はもとより世界の原発産業に与えた悪影響は膨大であるにもかかわらず、日本は原発の安全性と産業発展のために国際社会に対し一体何をしたのか問わざるを得ない。しかし、コスト削減のために行われる汚染水の強行放出を良しとする国家は存在しない。トリチウムの半減期は12年と比較的短い。日本政府は、放出よりも福島原発の隣接地域に貯蔵するための敷地を確保し、トリチウムの自然減少を待つべきだ。

チョン・ドンウク中央大学エネルギーシステム工学部教授
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