[2021_04_27_09]「汚染水」と言うか「処理水」と言うか 一部のあからさまなすり替えに見える安全神話の再発信 どう呼ぼうと放射性廃液に違いはない 敷地内で新たなタンク基地の造成は可能 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年4月27日)
 
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「汚染水」と言うか「処理水」と言うか 一部のあからさまなすり替えに見える安全神話の再発信 どう呼ぼうと放射性廃液に違いはない 敷地内で新たなタンク基地の造成は可能 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

◎原発からの排水

 現在、東電福島第一原発敷地内に存在する水は、そのままでは海洋投棄はできない「汚染水」だ。
 この水と原発(大事故を起こしていない)から放出される排水が同一視されているが、それは間違っている。
 世界の原発から排出される放射性廃液は、浄化系を通して排出される。
 これには、運転中の核燃料からしみ出すクリプトン、キセノン、ヨウ素、トリチウムを含むが、ごく僅かに核分裂生成物であるセシウム、ストロンチウム、アンチモン、テクネチウム、ニオブなども含まれる。発生原因は燃料棒のピンホールの他に、燃料表面に付着しているウランの核分裂もある。
 さらに燃料棒のジルコニウムが放射化したもの、圧力容器の鉄など炉水中に含まれる不純物が中性子を浴びて精製されるコバルト、マンガン、ニッケル、鉄などが加わる。
 炉水中の放射性物質は、原子炉浄化系や排気系のフィルターで処理される。原発の中で最も汚染されるのは、浄化系と排気系のフィルターである。
 この水を捨てること自体、海洋汚染や環境破壊、人間の被曝増大につながり、強く反対をしてきたから、容認などはしないが、「汚染水」と同一視することはできない。
 原発の「処理水」は、福島第一原発の「汚染水」とは全く違う。
 なお、再処理工場の排水は、原発より何桁も高い放射性排水である。原発の排水より異常に危険であり、長年反対をしてきた。
 東海再処理工場から排出されたトリチウムは4500兆ベクレルで福島の5倍以上というが、それ自体が大きな問題なのである。
 東海がOKで福島がNGなどと言っているわけではない。
 また六ヶ所再処理工場が試験中の2006年から2008年にかけて2150兆ベクレルのトリチウムを青森県沖に排出しているが、これも大きな問題である、決して容認も出来なければ、問題が無かったわけでもないのである。
 こんなにすさまじい汚染を海にもたらす再処理工場こそ、止めなければならない。その大きな理由に放射性物質の大量放出があるのだ、ということを強調しておく。

◎「汚染水」と「処理水」

 「汚染水」とは、溶け落ちた核燃料(デブリ)を冷やし続ける冷却水と、建屋に流れ込む地下水や雨水が混じり合ったものだ。
 ALPSを使い、汚染水から放射性物質の多くを除去した結果を「処理水」と言っているが、法令上の審査を経ていない装置で処理されたものは告示濃度限度も満たしていない。
 緊急事態下において汚染水を処理せざるを得ない状況に追い詰められていたため、想定された原発の廃液とは全く性状が異なっているものを処理したに過ぎない。
 法令上の「処理水」とは全く異なるため、これを「ALPS処理水」というのはまだしも、単に「処理水」というのは誤りだ。

◎排出に向けた東京電力の説明

 東京電力はこの水をそのまま流すとは言っていないことは事実である。
 法令上の告示濃度限度を超えるものが72%もあるので、流すことは出来ない。
 もう一度放射性物質の低減のために処理装置に通し、さらに告示濃度限度を満たす水準にまで海水で薄めて海に排出する予定だ。
 東電は排出準備段階として「ALPSによる二次処理によってトリチウムを除く核種の告示濃度比総和が1未満に低減できることを確認できました。」と、実験処理結果を「二次処理性能試験結果」として公表はしている。
 しかしこの結果について、第三者による検証はされていないし、規制委も許認可の対象にはしていない。
 今後行われるのは、規制委による排出設備の設置許可審査、設備の設工認、使用前検査となる。この段階になって始めて、二次処理装置の実態と、その性能が明らかにされる。
 汚染水排出は「ALPSをもう一度通して行う」のではない。
 そのための審査や建設で2年かかるというのが現在の東電の説明だ。

◎タンクの増設問題

 東京電力は「2022年夏頃にはタンクが一杯になる」と説明してきた。
 しかし今は2021年の、そろそろ夏である。あと1年余りでは設備は出来ない。
 さらに、設備が出来て排出が始まったとしても、最初は試験的にゆっくりと流すうえ、処理設備の能力や処理した水の検証なども必要になる。見た目タンクは減らない。
 その間も汚染水は溜まり続ける。大型台風が一発来ただけで一気に数千トンから1万トンの汚染水が発生してしまうかも知れない。
 雨水や地下水のブロックが出来ていないのだから当然の帰結だ。
 その結果、タンク増設は既に必至の情勢で、今後増える量を勘案すれば180万トン規模まで増やさなければならない。
 現在のタンクの規模、1基あたり1350トンで計算すればあと320基ほどは必要になる。
 フランジタンクのリプレースや排出のために貯蔵する一時貯蔵タンクも含めれば、新たなタンク基地の造成は避けられない。
 汚染水発生を極力減らし、今の「汚染水」を効率よく貯蔵できるタンク基地を、敷地北の旧7、8号機建設予定地にある「土捨て場」などに造成すれば、福島第一原発敷地内でも貯蔵は可能なのである。
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