[2021_04_14_08]米国、日本の汚染水海洋放出決定を支持…国際基準の“抜け道”が浮き彫りに(ハンギョレ新聞2021年4月14日)
 
参照元
米国、日本の汚染水海洋放出決定を支持…国際基準の“抜け道”が浮き彫りに

ネッド・プライス国務省報道官声明 国際基準の曖昧さを日本が利用したとの指摘も

 米国政府が福島第一原発の放射性物質汚染水を海に放出するという日本政府の決定に対し、「国際安全基準に合致する」として、支持の意思を明らかにした。
 米国務省は12日(現地時間・日本時間13日)午後、ネッド・プライス報道官が声明を発表し、「日本政府は国際原子力機関(IAEA)と緊密に調整しながら、放射能モニタリングや復元、廃棄物管理、原子炉の廃棄など、2011年3月の福島第一原発事故の影響を管理するための措置を取ってきた」とし、「日本政府は処理水を海に放出するため『ALPS処理水の処分に関する基本方針』に関する決定を発表した」述べた。国務省は放射性汚染水に言及する際、日本が使用する「処理水」(treated water)という表現を使った。
 プライス報道官は「米国は日本政府が現在福島第一原発に保管している処理水の管理と関連し、様々な選択肢を考慮したと認識している」としたうえで、「この特別かつ厳しい状況で、日本は選択肢と効果を検討し、その決定に関して透明かつ国際的に受け入れられる核安全基準を満たしてアプローチを採択したものとみられる」と述べた。さらに「我々たちは日本がこのアプローチの効果を観察する中で、調整とコミュニケーションを続けることを期待する」とも語った。
 アントニー・ブリンケン国務長官もツイッターに「我々は、日本が福島第一原発から出た処理水を処分する決定をする上で、透明な努力を傾けてくれたことに感謝する」とし、「日本政府が国際原子力機関と調整を続けていくことを期待する」という書き込みを残した。
 国際安全基準に合致するという米国の発表は事実だが、実情は国際社会の基準が曖昧すぎるという指摘もある。日本はこうした“抜け道”を積極的に利用しているわけだ。
 三重水素(トリチウム)は人体内に入ると被ばくを起こす可能性があるが、浄化設備では除去できない。しかし、国際的に共通の排出基準がなく、国ごとに基準が異なる。米国と韓国がそれぞれ1リットル当たり放射線量3万7000ベクレル(放射性物質の1秒当たり崩壊回数の単位)と4万ベクレルを基準にしている一方、日本は6万ベクレルで、比較的高い。日本は今回、海水を混ぜてトリチウムの放射線量を基準より40分の1(1500ベクレル)未満に薄めて放流すると発表した。薄めたところで、海に流れ込むトリチウムの総量は変わらないが、総量に対する最小限の国際基準すらない。現在、日本がタンクの中に保管している汚染水125万トンのトリチウムの放射能総量は、約860兆ベクレルと推定される。汚染水は福島第一原発の廃炉を進める30〜40年間発生し続ける予定であるため、放射線量もさらに増えることになる。トリチウムは水産物などを通じて人体に入り、有機結合型トリチウムに変った場合、内部被ばくの恐れもあるなど、人体や環境に及ぼす影響がまだ明らかになっていないため、より厳しい管理が必要だ。
 福島第一原発の汚染水の中に国際社会が禁止している人体に致命的な放射性物質が含まれていることも論議を呼んでいる。 放射性物質基準も国ごとに異なるが、猛毒性発がん物質のストロンチウム90に対する日本の排出基準は1リットル当たり30ベクレル。福島第一原発の汚染水の中には1リットル当たり平均3355ベクレルのストロンチウム90が含まれており、基準値を110倍以上上回っている。平均ではない最大検出量では2万倍だ。ヨード129の平均濃度も9.36ベクレルで排出基準(9Bq/L)を上回る。セシウム137の数値は、汚染水全体の平均濃度(5.02ベクレル)で見れば基準値(90ベクレル)を下回っているものの、最大値(829ベクレル)は基準値より9倍高い。東京電力は、浄化を通じて放射性物質を基準値以下に下げた後に放出する計画だと明らかにしたが、正確な内容は公開していない。
 日本政府は、農林水産業者や地方自治体の関係者らが参加し、海洋放出前後の放射性物質の濃度などを監視する予定だ。 また、国際原子力機関(IAEA)と協力して国内外に客観的な情報を伝える方針も明らかにした。ラファエル・グロッシIAEA事務局長は同日、声明を発表し、「日本の発表を歓迎する」としたうえで、「この計画の安全かつ透明な履行を支援する準備ができている」と述べた。しかし、環境団体は原発産業を復興させるためのものだと見ている。
 同日午前、日本政府は関係閣僚会議を開き、福島第一原発のタンクに保管されている汚染水を海に放出する内容の処理方針を決定した。

ワシントン/ファン・ジュンボム特派員、キム・ソヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
KEY_WORD:汚染水_:FUKU1_: