[2021_03_02_06]先送りが続く「汚染水」の行方(TBSNEWS2021年3月2日)
 
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先送りが続く「汚染水」の行方

 東日本大震災から、まもなく10年。JNNでは「つなぐ、つながるプロジェクト」として、各番組、横断で、被災地の今をお伝えします。事故を起こした福島第一原発では依然、溶け落ちた核燃料が手が付けられない状態で残り、高濃度の放射性物質を含む汚染水が出続けています。3・11を前に、現場を取材しました。
 地震と津波で電源を失い、原子炉を冷やせなくなった福島第一原発は、1号機から3号機で核燃料が溶け落ちるメルトダウンが起きました。あの事故から10年。

 「あまり前に出るなよ」(調査官)

 建屋の中は、今も強い放射線が計測され、原子炉内にある溶け落ちた核燃料は、全く人を寄せ付けません。その燃料の破片を一つ一つ取り出すきわめて困難な作業は、事故から10年目となる今年、ようやく、一部で始める予定となっていましたが、さらに1年程度ずれ込むことに・・・。政府と東電の「行程表」では、あと30年で廃炉を完了させる計画ですが、見通しは全く立っていません。そんな中、今、喫緊の課題となっているのが・・・
 「私の背丈よりはるかに大きいこちらのタンクに、アルプスで処理された処理水がためられています」(記者)

 原子炉の中で溶け落ちた核燃料は、安定した状態を保つため、水を注入して冷やし続けなければなりません。この冷却水に加え、地下水や雨水も流れ込むため、超高濃度の放射性物質を含んだ「汚染水」が、毎日140トンずつ増え続けているのです。
 「今ご覧になってるところ、処理する前の汚染水は向こう側からきます」(東京電力・廃炉コミュニケーションセンター 木元崇宏副所長)
 「汚染水」は無数の配管が張り巡らされた、この巨大な施設で「処理」されています。
 「(汚染水の)上澄みの中に溶けている放射性物質がたくさんありますので、それをこの吸着塔をぐるぐる通すことによって、最終的に処理水として処理をする」(東京電力・廃炉コミュニケーションセンター 木元崇宏副所長)

 放射性物質を吸着する装置によって大部分が取り除けるとされていますが、それでも「トリチウム」は残ります。この「処理済みの汚染水」、いわゆる「処理水」がたまり続けているのです。増設に増設を重ね、1061基となったタンクも、来年秋には満杯になる見通し。これ以上ためることができない「処理水」は、どこへいくのでしょうか。
 「この処理水をいま、環境に出すという方針を国の方で検討していただいていて、その方針が出るというふうに我々は考えていますので。(Q.要するに、国の方針に従うしかないということですか)はい。我々はそれを待ってるという段階になります」(東京電力・廃炉コミュニケーションセンター 木元崇宏副所長)

 政府はトリチウムについて、通常運転の原発からも一定量が放出されているなどとして、「処理水」を海に流す案を軸に調整を進めています。ただ、「トリチウム」以外の放射性物質についても完全に除去されている保証はなく、漁業関係者などからの反対も根強いため、最終決定の先送りが続いています。(02日10:03)
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