[2021_01_10_01]科学的には安全でも安心に繋げられるかは別問題[原発処理水] 一番の懸念は【風評】復興を進める決定を(福島テレビ2021年1月10日)
 
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科学的には安全でも安心に繋げられるかは別問題[原発処理水] 一番の懸念は【風評】復興を進める決定を

<福島第一原発にたまり続ける”処理水”とは>
 東京電力・福島第一原発の原子炉建屋には、融け落ちた核燃料「燃料デブリ」が残されている。
 燃料デブリを冷却する水や地下水などが、燃料デブリに触れて「汚染水」となり、毎日130トン増加している。
 専用の装置で、汚染水からほとんどの放射性物質を取り除いたものが「処理水」で、これには水と似た性質の「トリチウム」が残り、敷地内のタンクで保管している。
 タンクの設置スペースにも限りがあるため、2020年の夏には処分方法を決める必要があったが、未だに決まっていない。

<水蒸気放出か?海洋放出か?>
 東京電力・福島第一原発に設置された1047基のタンク。
 137万トンの処理水を入れられるが、既に9割が埋まっている。
 処理水の処分方法について、専門家による国の検討委員会は【水蒸気放出】と【海洋放出】が現実的と判断。中でも、各国の原発で行われている【海洋放出】が『より確実』とした。
梶山経産相:「廃炉作業を遅延させないためにも、日々増加する処理水の取り扱いについて、早期に方針を決定していく必要があると考えています。政府として責任を持って結論を出してまいります」
2020年10月。政府は一旦は「海洋放出で処分する方針」を固めたが、決定を見送った。

<方針決定見送りの背景にあるのは、漁業者を中心とした反対意見>
 全国漁業協同組合連合会・岸宏会長:「我が国漁業者の総意として、また全国の漁業者を代表し絶対反対であります」
 海洋放出によって、新たに発生する”風評”を懸念してのもの。
 一方で、トリチウムを研究する茨城大学の鳥養教授は、その安全性をこう説明する。
 茨城大学大学院理工学研究科・鳥養祐二教授:「東京電力は(トリチウム)の濃度が)1500ベクレルパーリッターで海洋放出することを考えていますが、実は世界的には、これよりもさらに高いトリチウム水を飲んでいる国もあります。これぐらいのトリチウムであれば正直言って心配する必要はないです。他の核種がなければですよ。あくまでも前提はそこです」
 鳥養教授は、処理水の排出基準は科学的に安全だとした上で、安心に繋げられるかは別の問題と指摘する。
 茨城大学大学院理工学研究科・鳥養祐二教授:「トリチウムの海洋放出自体は安全だと思います。でもやはり安心はできないんですね。その安心できるためのシステムっていうのを、政府には求めたいと思います」

<東日本大震災以降、風評と戦い続ける福島県の水産業>
 「お正月でタコを食べる機会って多いんで。12月が一番忙しいですね」
 福島県いわき市のカネセン水産は、東日本大震災の津波で被災し、その後は風評と闘ってきた。
 カネセン水産坂本剛士さん:「辞めようか、どうしようかと、考えた事もあったんですが」
 さらに2020年は、新型コロナウイルスの影響で出荷量が激減。
 「常磐もの」のタコを、伝統の製法で加工。通販事業に力を入れ、出荷量は回復しつつあった。
 しかし、処理水を海洋放出することになれば、新たな風評が生まれて「死活問題」になると不安を募らせる。
 カネセン水産坂本剛士さん:「生きた心地がしないといいますかね、将来の事が心配になります。もっと長い目で見て、色んな情報だったり説明だったり、そういうのをこまめに流して欲しかったと思います」
 政府は2021年1月にも、新たな風評対策と共に、処分方法を決定する方針。
 処理水の処分を巡って出されてきた意見に共通するのは、「廃炉」ではなく「復興」を進めるための決定。

福島テレビ
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