[2020_11_15_02]【廃炉の現場】(7)第1部デブリ取り出し 保管に最大6万平方メートル 国は早く処分地決定すべき(福島民報2020年11月15日)
 
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【廃炉の現場】(7)第1部デブリ取り出し 保管に最大6万平方メートル 国は早く処分地決定すべき

 「燃料デブリ一時保管施設には最大約六万平方メートルが必要」−。
 二〇一九(令和元)年八月、東京電力福島第一原発で発生し続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水の扱いを検討する政府の小委員会で、東電側の試算が初めて示された。
 それから一年が経過し、溶融核燃料(デブリ)取り出しの開始が来年に迫る中、構内での受け入れ先となる一時保管施設ですら、具体的な建設場所は「未定」の状態だ。このため、デブリの取り出し作業そのものを「見切り発車では」と懸念する声は多い。

■乾式保管

 初期の取り出し作業では、「グローブボックス」と呼ばれる密閉された専用の機器で重さ、放射線量を測定し、一時保管した後、一部を研究施設などで分析する。
 取り出し量が増えてきた際には「セル」と呼ばれる金属やコンクリートで密閉された施設を設置し、保管する。複数設けたセルの中で測定するとともに、放射線や放射性物質が外に漏れないようにする。セル内でも燃料を閉じ込めるための金属性の収納缶に乾燥した状態で入れる「乾式保管」を採用する計画だ。
 セル内には取り出した後のデブリの熱量や放射線量の変化、ダスト濃度の数値を常時監視する装置を取り付け、「多重防御」を徹底する方針だ。収納容器一つに付き使用済み核燃料一体の三十分の一ほどの熱量のデブリのみを入れるため、東電は発熱量を相当小さくできると説明する。
 東電は二〇二〇年代後半の一時保管施設の建設を目指すが、具体的な場所は廃炉中長期プランにも盛り込まれていない。
 使用済み核燃料の保管施設を含めれば約八万一千平方メートルの広大な敷地が必要で、タンク群が占める面積の四分の一に当たる。

■議論先送り

 一時保管を終えた後のデブリの最終的な処理・処分の方法については、いまだ方向性さえも決まっていない。政府と東電による廃炉の中長期ロードマップでは、「性状の分析などを進め、第三期に決定する」との記載のみにとどまり、本格的な議論は先送りされている。
 二〇一六(平成二十八)年七月に原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)が廃炉戦略プランで、デブリを建屋内に閉じ込める「石棺方式」に言及した際、県内から猛反発が起きた。「石棺」の文言は修正されたが、県と関係十三市町村が間髪入れずに国にデブリを含む放射性廃棄物を県外で処分するよう要望した経緯がある。
 福島第一原発が立地する大熊町の吉田淳町長は「デブリの最終処分をどこで行うのか、今のうちから検討、協議すべき」と訴える。廃炉の第一段階とも言える処理水処分でさえ結論が出ていない状況を踏まえ、「デブリは廃炉の本丸。影響の大きさは処理水以上だろう」と先を見据える。
 「原子力事業において、廃棄物処理は逃れられない宿命。原子力政策を進めてきた国の責任で早期に最終処分地を決めてほしい」。吉田町長は言葉に力を込めた。(第1部「デブリ取り出し」は終わります)
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