【記事88410】【9・19判決 東電旧経営陣強制起訴裁判】証言から見えてきた津波対策 (福島テレビ2019年9月17日)
 
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【9・19判決 東電旧経営陣強制起訴裁判】証言から見えてきた津波対策 

福島原発告訴団の団長武藤類子さん。
 原発事故の翌年、福島県内の被災者とともに東京電力旧経営陣の刑事責任を求め告訴・告発した。
 「ここまでようやく辿り着いたという感じですね」
 これまで37回に渡り全ての公判を傍聴した武藤さん。
 裁判の内容を書き留めたノートは14冊にのぼる。
 武藤類子さん:「裁判に来ることが出来ない人達にもなんとか裁判の中身を知らせなきゃいけないっていう思いがあったので必死に書きました」
 武藤さんが傍聴の中で注目したのが津波対策を巡る現場の社員と旧経営陣のやり取り。
 武藤類子さん:「東電の社員の人達が15.7メートルという津波の計算が出てきたときに、それに対して対策をしなければならないということで いろいろと考えていたってことが分かったわけですね。」
 原発事故前の3年前、津波対策を行う東電社内の担当グループは子会社に依頼して、国の地震評価を基に高さ15.7メートルの津波が第一原発を襲うと試算。
 対策案とともにこれを東電元副社長 武藤栄被告に報告。
 元東電社員:「武藤さんもビックリした様子で、『信頼性はどれくらいか』などの質問があった」
 武藤栄被告は対策に必要な許認可などを調べるよう指示。
 担当者たちは津波対策を進めようと資料をまとめたが翌月に設けられた報告の場で意外な言葉が返ってきたという。
 武藤栄被告:「研究しよう」
 武藤栄被告は津波対策の検討を保留し、国の地震評価は信頼できるかどうか専門家に検討を依頼するよう指示した。
 東電元幹部供述調書:「当時は新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発が停止し、会社の収支が悪化していた。対策工事は原発の停止や数百億円の支出につながり会社としてリスクがあった」
 裁判では東電元幹部の供述調書も読み上げられ、検察官役の指定弁護士が “対策を先送りした” と指摘すると、武藤被告は「大変心外」と強く否定し、試算の基になった地震評価について「”曖昧”という印象で、ただちに対策の検討に取り込むことはできないと感じた」と述べた。
 この津波試算の基となった国の地震評価については専門家の間でも意見が分かれている。
 証人として法廷に立った東北大学の今村文彦教授はその信頼性に疑問点もあると話す。
 東北大学教授(津波工学) 今村文彦さん:「長期評価というのは今から30年後までにどれくらいの発生確率なのかというところなんですね。例えば30年くらいで繰り返しているものに関しては過去の頻度も高いのでかなり正確に予想できますがそれが例えば100年とかそれを超えてとか1000年とかになると我々のデータがそれを含むかというもわからないんですね。そういう面で信頼性が低くなってしまいます」
 一方、法廷に立った地震学の第一人者である東京大学の島崎邦彦名誉教授は「国の地震評価は信頼でき、対策を行っていれば原発事故は防げた」と述べている。
 津波は予測でき、事故は防げたのか?
 様々な証拠と証言を裁判所がどう判断するか注目される。
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